【第3回】ロンドン・メトロポリタン大学会議通訳修士コース編「ロンドンでの生活と学習環境について」

こんにちは!ロンドン・メトロポリタン大学会議通訳修士コース在学中の渡辺有紀です。

イギリスでは6月初旬にエリザベス女王の即位70周年記念のお祝いがあり、大変な盛り上がりでした。ちなみにエリザベス女王は1926年生まれ。4月に96歳を迎えています。96歳でありながら凛として公務をこなしている女王の姿にいつも心を打たれます。

さて今回は、ロンドン・メトロポリタン大学(以下ロンドンメット)での会議通訳修士コースで学ぶにあたり、学生はどんな生活をしているのか?具体的なロンドンの住環境や生活、学習環境について、私の周りの学生の体験や個人的な調査にもとづいて書いてみたいと思います。ちなみに私自身は渡英以来ずっと、オックスフォードという街に住んでいます。余談ですが、オックスフォードからは、ロンドンの中心地まで電車で約50分、高速バスも24時間利用可能。そんなわけで、実はオックスフォードからロンドンに通学・通勤している人も少なくないのです!

ロンドンの交通事情

さて、ひとえに「ロンドン」と言っても、とても広範なエリアです。そして東京と同じく、移動には地下鉄の利用が一般的です。地下鉄は、Zoneに区分されています。観光地で有名なバッキンガム宮殿や、大英博物館、ビッグベンなどがある中心地のZone 1から、郊外まで地下鉄が放射線状に広がっており、外側に行くほどZoneの番号が大きくなります。この地下鉄Zoneの圏内であれば、約30〜60分ほどでロンドン中心地までアクセスできます。Zone 2から3圏内に住んで、中心地に通勤・通学している学生が大半だと思います。前回も少し触れましたが、ロンドンメットの会議通訳科は、コロナ禍直前の2019年、金融街のシティから、北ロンドンのHollowayという地域にキャンパスを移転しました。現在のHollowayキャンパスは、地下鉄のZone 2に位置します。ロンドンの中心地から地下鉄で15分ほどです。

学生の住居形態

大半の学生は、ロンドン市内の各地から通学しています。また中には私のように、ロンドン以外の地域から通学している学生もいます。住居形態も、もともと家族とロンドンに住んでいる学生もいれば、留学生として大学の近くの学生寮に住んだり、フラットや一軒家をシェアしたり(いわゆるシェアハウス形式)、独立したアパート(一人暮らし)に住むことを選んでいる学生もいます。それぞれの形態に長所と短所がありますが、住む地域 x 住居形態で家賃が決まるといえます。平均的なZone 2のワンルーム学生寮では、東京都心のワンルーム賃貸月額より高めのようです(2022年6月現在)。キッチン、バスルームなどが付きで、プライバシーは守られますが、ワンルームに全て詰め込まれており、かなりの狭い空間になります。しかし、中はモダンなデザインで、Wifiやキッチン、バスルーム、デスク、ベッドや収納など家具も完備されている施設が多いので、狭くても期間限定であれば、勉強に集中できる環境だと思います。

シェアハウス形式は、ある程度の広いスペースが確保できることと、シェアする人数によっては、家賃の負担が少なくなることが利点です。しかし、やはりキッチンやバスルームを共有することになるので、プライバシーの問題があります。またWifiの接続や、同居人の騒音が問題になることも多く、通訳練習や録音・録画にはあまり適した環境とはいえないという声を多く聞きます。何もかも独立していて、ある程度スペースも広いアパートを選ぶこともできますが、最低でも学生寮の2倍の費用を準備する必要があるでしょう。どのようなスタイルの住居を選ぶにしても、治安が安全な地域を選ぶことは大事です。

学生寮であれば「London student accommodation」などで検索すると、たくさんのサイトがあります。家賃、地域別、内装写真など詳細が紹介されていますし、オンラインで予約もできるので、大変便利だと思います。またイギリス全国の物件が検索できるサイトRightmoveも、地域ごとの家賃相場などがわかるので、ぜひのぞいて見ることをお勧めします。またロンドンの各地域の治安や物価なども、検索することができるサイトはたくさんあります。

留学費用はどれくらい?

仮にロンドンに学生として留学するのであれば、住居費に加えて、学費と生活費が必要となります。学費は各大学のウェブサイトなどで調べることができると思います。問題の生活費ですが、こちらも日本の都市で生活するより、全体的に高くなるでしょう。例えば1回の外食費用は、日本の平均的なレストランの2~3倍になると思います(2022年6月現在、個人比較)。イギリスでは、ちょっとしたカフェやテイクアウトでも、高額だと感じるかもしれません。昨今の円安でさらに割高感が増している気がします。そのため、ちょとしたコンビニ食や美味しいカップラーメンもないロンドンで、限られた費用で留学するには自炊がマストだと思います。ただ、イギリスの大学院は最短1年間で修士号を取得することができます。またロンドンメットの場合、通学が必要な期間は10月から翌年5月までです。そのため学費+8ヶ月間の住居・生活費を用意することができれば、実現可能だと思います。これから通訳者を目指す方は、ぜひ短期集中型の海外大学院も選択肢の一つとして、検討してみてはいかがでしょうか。

学生のバイトはできる?

イギリスに学生ビザで留学している学生は週20時間までアルバイトをすることが可能です(2022年6月現在)。最も一般的なバイトはレストランやショップの店員、施設の受付などでしょう。あとは、犬の散歩や、家庭に住み込んで子供の送り迎えや食事の面倒をみるオペアという仕事などもあります。しかし、大学院の会議通訳科の課題や学習量を考えると、こういった仕事はあまり現実的ではないかもしれません。それよりも、コロナ後はリモート環境で仕事がしやすくなっているので、日本での仕事を辞めずに、留学中もリモートで継続することはできないか?探ってみるのも手だと思います。また、翻訳や遠隔通訳の仕事を留学中も継続できれば、ある程度の収入を確保しながら、修士号を取得することも可能なのではないでしょうか。

学習環境について

ロンドンメットの図書館は学期中であれば、早朝から夜遅くまで利用することができます。長期休暇中も平日は開いています。ただ通訳の練習やスピーチ作成は声を出さなければいけないので、図書館はあまり理想的な環境とはいえません。そのため会議通訳科の学生は、やはり自宅で通訳練習や課題の作業をすることが多いです。またキャンパスには通訳ブースが6つあり、学生は授業後や時間がある時にブース内で自習することができます。そのほか、メインの教室とブース以外にも、ミーティングルームがあり、そこで学習することも可能です。さらに、コロナ禍でオンライン授業が一般的になってからは、学生同士でオンラインでの練習会も多く行われています。

他言語の学生との繋がり

もう一つ留学ならではの特徴として、他言語の学生同士の繋がりがあります。会議通訳科の学生は、ヨーロッパを中心に世界各国から集まっています。通訳の授業には、言語別のチュートリアルもありますが、他言語の学生が一同に受ける授業も少なくありません。その中で、一緒にスピーチや課題のプレゼンを作成したり、模擬会議を運営するなどcollaborative approachと呼ばれる共同作業がカリキュラムの基盤となっています。そのため、言語を超えた学生同士の絆が深まります。授業後みんなでパブに繰り出したり、週末に集まってピクニックに出かけたり、という交流もかなり盛んです。こうしてできた他言語の通訳者との「横のつながり」は、卒業後も続きます。特に昨今、遠隔通訳案件では国境がなくなる中、海外の大学院で培った人脈や、他言語の通訳者と横の繋がりは、大変有意義だと思います。また海外では日本のような民間の通訳学校が一般的ではないため、海外の通訳エージェントと仕事をする上でも、大学院での通訳修士号は役に立つのではないでしょうか。

以上、今回はロンドンでの学生生活と環境について書いてみました。

最終回となる次回は、修士論文や2年間の大学院生活の総括について書いてみたいと思います。


渡辺有紀 Yuki Watanabe

2020年よりロンドン・メトロポリタン大学会議通訳修士課程に在籍(2022年9月卒業予定)。日本で大学卒業後、短期語学留学を経て日本で社内通翻訳を経験。2013年に渡英。現地企業で勤務後、通訳者として再挑戦すべく大学院へ進学。

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