【第21回】柴原早苗の通訳ライフハックス!「やらないことを決める」

2023年になりました。昨年も本コラムをお読みくださりありがとうございます。本年もみなさまにとって少しでもお役に立てるような情報を執筆したいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします!

さて、新年と言えば気分も心機一転。色々とヤリタイコトも出てきますよね。私は手帳の余白ページに「やりたいことリスト」を設けています。買いたいもの、観たい映画や美術展、出かけたい場所等々です。特に期限を設けてはいないのですが、頻繁に見返しては進捗状況を確認しています。たとえば「□西洋美術館で○○展鑑賞」という具合に、冒頭にチェックボックスを設けて書きます。そして実行したらチェック☑を入れているのです。ただ、面白いもので時間と共に熱が冷めたケースもあります。そのような場合は横線を引いて消しています。

ちなみに私は年始に日比谷でストリートピアノを見かけました。天井高いホールに設置されたピアノは音響もよく、しかも場所自体がおしゃれ。それを見てふと「今年こそピアノを再開して、大好きな曲をストリートピアノデビューする!」なる目標を思い立ちました。果たして自分が不特定多数を前にストリートピアノを弾く勇気があるかは別問題ですが(笑)。

何にせよ、何か目標が出てくると、そのためには時間を割く必要がありますよね。それはすなわち「今までやっていたことをやめて、目標に向けて時間を捻出すること」を意味します。そこで今回は、私自身が最近実行している「やらないこと」をご紹介します。「やらないこと」を増やさない限り「やりたいこと」はできないからです。

1.体重計に毎日乗るのをやめた

 通訳の仕事に必要なことは体力!ということで食べ過ぎや運動不足を防ぐべく、自省の念も込めて私はこれまで毎日体重計に乗ってきました。体重計のメリットは、自分の「今」がわかること。ただ、デメリットとして「数字に左右されやすいこと」が挙げられます。確かに「気にしなければ良いだけなのでは?」と言うのもわかります。でもこればかりは性格なのでしょうね。私は数字の増減に一喜一憂してしまうのです。

 これまでは体組成計で様々な数値を毎日計測していましたが、やれ「体脂肪が増えた」「BMIが上がった」と振り回されるため、思い切ってフツーの「体重計」を入手。計るのも数日おきにしました。これでだいぶストレスが減りました。

2.料理への「ねばならない」を手放す

これまでの私の人生、なぜか周りに料理上手の人が多く、それで余計に「私も手作りを頑張らねば」との呪縛に悩まされていました。とりわけ子どもたちが小さい頃は手作りや無添加といった情報を意識してしまっていたのです。ただでさえ仕事と子育てが大変なのに、不得手な料理まで頑張ろうとしたことで大いなるストレスを覚えました。今も料理が大得意とは言えません。

数年前にホットクックという自動調理器を買ったことでだいぶ楽になったのですが、最近はさらにそれをヘビーに使うようにしています。レシピブックやサイトを参照しつつ、「自分が今、食べたいもの」を考えるようになったのです。「今、食べたい」というのは、体からのサインでもあります。疲労度や不足栄養分を体が欲するわけですので、市販のお惣菜などもうまく取り入れながら、食生活を充実させたいと考えています。

3.世の中と同じように動くのをやめた

 日本にいると一年中さまざまな「イベント」がありますよね。クリスマスが終わると新年、次は恵方巻にバレンタイン、お雛様、という具合。季節行事として楽しむのはもちろん嬉しいのですが、自分のスケジュールが多忙だとそこまで手がまわりません。私は年末年始も平常運転で仕事がありましたので、そうしたお祝い関連はミニマムで今回済ませました。「やらねば」と思うとものすごいストレスですし、世間と同調しない自分への自罰感情(?)も。するとますますモヤモヤしてしまいますよね。

 大掃除は暖かくなる春先へ先延ばし。お正月飾りも買いませんでしたが、お正月風のポストカードを室内に飾りました。それだけでも十分気分を味わえました。

4.情報やモノに頼り過ぎない 

 今は何か不明点があれば即座にネットで知ることができますよね。とても便利ですが、ややもすると情報過多になります。さんざんヒントを取り入れたところで満足してしまい、結局「検索して終了」となることも。それを防ぐには、あえて調べないという選択肢も有りだと思います。まずは自分で工夫してみる、買わないで済むなら手持ちの物でやってみる、という具合です。

 最低限の情報やモノだけで試行錯誤した結果、思いがけないことが達成できたりもします。たとえば先日私はテレビ台の横に番組情報誌をスッキリ置きたいと考えました。そこで思いついたのが「雑誌を丸めて立てかけられるような花瓶を置く」というもの。100均で花瓶を買おうかと考えたのですが、ふと我が家を探すと「マイボトルの入っていた細長い箱」を発見。これに入れたところスッキリ収まったのでした!

5.不得手なことは考えない

 英語の指導をしていてよく受ける質問が「どうやったら実力アップできますか?」「どんな勉強法がありますか?」というもの。これらの答えはケースバイケースです。というのも、質問者が私と同じ環境に置かれているとは限らないからです。しかも、英語へのアプローチや好みも異なります。たとえば私の場合、歩きながら目に入ってきたモノの英訳を考えるのが楽しくて、すぐに辞書を引きます。「へえ、椿ってcamelliaって言うんだ」「camelliaの語源はCamellusというモラヴィア人イエズス会宣教師・植物学者から来ていたのね」「モラビアってチェコ東部の地名。初耳」という具合。エンジョイしながら調べます。

 しかし、同じ英語学習でも私は「公式問題集をやるのは苦手」「単語テキストは三日坊主」「学習アプリは目がくたびれる」となり、手付かずです。たとえ世の中がそれらを推奨しようと、嫌なものは嫌なのですね。よって、無理に不得手なことを考えたり取り組んだりしないようにしています。バカボンのパパごとく「これでいいのだ」と割り切るのも大事なのでしょう。  以上、今回は「やらないこと」と題してお届けしました。でも自分で書いていてふと反省しました。「ダイエットも、苦手な項目をしようとするから挫折するのでは?」ハイ、その通り。たとえ世間がランニングだウォーキングだ筋トレだと勧めても、自分が気乗りしないなら、自分なりの方法を試行錯誤した方がストレスフリーになりますよね。今年も頑張ろう、ダイエット・・・(何年言い続けてきたのやら!)


柴原早苗(しばはら さなえ)

放送通訳者、獨協大学非常勤講師。上智大学卒業。ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言、大統領就任式などの同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも担当。ツイッター(@Addington76)も日々更新中。