【第10回】通訳者・翻訳者の子育て「トライリンガルへの長い道のり(後編) 」

(執筆:翻訳者・通訳者 丸岡英明)

長女が9歳のときに台湾からオーストラリアに移住したのに対し、7歳年下で現在13歳の次女は、2歳のときにオーストラリアに移住しました。移住当時はようやく言葉を話し始めたばかりで、日本語も中国語も片言しか話せませんでしたが、英語を速く習得させたいとの思いから、地元の保育園に毎日預けることにしました。そのお陰で、次女はすぐに英語が上達しました。長女のときと同様に、台湾人である母親が中国語で、日本人である私が日本語で次女にも話しかけるようにしたのですが、返事は英語で返ってくる事が次第に多くなり、今では100パーセント英語で返事が返ってくるようになってしまいました。長女と次女の会話も、オーストラリアに移住した当時は中国語だったのですが、長女の英語能力が上達するに従い英語で話すことが多くなり、今では完全に英語になってしまいました。

これは、子どもたちの性格の違いもあるでしょうが、台湾とオーストラリアという育った環境の違いも大きくあるのではないかと思います。どういうことかと言うと、英語は国際社会においてステータスが高く、広く使われている言葉であるため、英語圏で育つと英語以外の言語を学ぼうという意欲が削がれてしまうということです。私たちが住んでいるブリスベン市の南郊は、アジア系の移民が多く、両親はアジア言語を母語としているのにもかかわらず、子供たちは英語しか話すことができないという家庭が多くあります。

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