同時通訳グランプリ 入賞者の声
【学生部門】
グランプリ 奥山裕太(国際基督教大学)
まず初めに、JACI運営の方々、並びに関係者の方々、この度は素晴らしいコンテストを開催していただき誠にありがとうございました。また、通訳技能に関して様々なことを教えてくださった先生方、コンテストの準備にあたりご協力いただいた学校関係者の方々、常日頃から助けていただき誠にありがとうございました。今回のグランプリは私一人では受賞できなかったと言っても過言ではありません。改めて、今の自分があるのはたくさんの方に支えられているからだと認識しました。
コンテストに参加した経緯としましては、大学で通訳を教わっていた教授からお誘いを受け、挑戦してみようと思った次第です。この経験を経て、私はまた一歩成長できたように感じております。準備にあたっては、スピーチのテーマの勉強だけではなく、自分の訳出の録音を聞きながら自分の癖と向き合い、どこを直したらよいのかと考えながら練習をしてきました。日々の練習による能力の向上はもちろんのこと、他の学生と競い合えるということがさらなるモチベーションとなり、より一層練習に励むことができたのだと思います。人と競い合うことがすべてではありませんが、競い合うことで自身の能力を再確認し、さらにその能力を磨くことができるのではないでしょうか。
今回のコンテストは、私にとって実りの多い貴重な経験となりました。しかし、ここで歩みを止めることなく、これからもさらなる技能の向上に向けて努力してまいりたいと思います。最後に、コンテストを企画、運営してくださった方々、そして私を支えてくださった方々に、再度お礼を申し上げます。今後も、このコンテストが学生の通訳学習をさらなる高みへと導いてくれることを願っております。
準グランプリ 永瀬礼奈(国際基督教大学)
一言で言うと、同時通訳グランプリはとても貴重な体験の連続でした。私自身は最近環境が変わったばかりで、勉強時間の確保にも苦労する中での挑戦となりましたが、それでも本当に参加して良かったと感じています。
ブースがあり、スピーカーがいて、かつオーディエンスがいるという環境が純粋な学習機会として与えられることはなかなかありません。私は大学で2年ほど通訳の勉強をしていましたが、ブースを利用する機会というと基本的に大学のセミナーの通訳をするときに限られていましたし、一緒に参加した人の中にはブースを使ったことがない人もいたと記憶しています。この環境で同時通訳に挑めるというだけでも非常に価値ある体験なのですが、なんと大会後には直接指導していただいたことのある先生方だけではなく、初めてお会いする先生方からも様々なフィードバックをいただくことができました。こんなに贅沢な学習機会は普段めったにありません。それから、自分と同じように通訳の勉強に日々励む人とも知り合う機会ともなり、懇親会ではエージェントの方などともお話をする機会がありました。加えて、通訳者の方が大会の運営スタッフとして参加してくださっていたので、待ち時間には皆様の現場での体験を聞くことが出来たり、アドバイスをいただくことができたりと、通訳に携わる様々な立場の方から幅広くお話を伺うことができ、パフォーマンスをする時だけでなく、その前後も含めてすべてが実りある時間となりました。
本線前に行われた予選のパフォーマンスについてもフィードバックを頂けるのですが、細かく点数やコメントをつけてくださり、とても勉強になりました。
今回の大会を終えて、いっそう通訳の学習に対する意欲が高まり、やっぱり私は通訳が好きなのだと強く感じました。このような素敵な機会を用意してくださった皆様に感謝の気持ちでいっぱいです。この度は本当にありがとうございました。
■指導教員 田村 智子 国際基督教大学客員教授 (通訳翻訳学)
通訳という職業はここ10~15年程の間にかなり多様化しております。皆の憧れ「会議通訳」の「一匹狼自営業」への敷居の高さは変わらずとも、近年は「社内通訳」という形で企業に就職し通訳や翻訳に従事するという、頑張れば手が届くかもしれない具体的な職業としての選択肢も広がってきており、訓練生には大きな励みになっております。一方で、特に医療や司法等の分野では、加速度的に国際化する地域社会の言語ニーズに対応するため、ボランティアと紙一重のような形で通訳に従事するケースが年々増加していることも事実です。しかしいかなる形や条件であれ、要通訳の場で誰もが必要とするのが「質の高い通訳」である限り、通訳者たる者は常に更なる高みを目指し自己研鑽を続けていかねばなりません。
今回の「同時通訳グランプリ」は、このように日々鍛錬を重ねている学生や社会人に具体的な実務の第一歩としての「指標」を明確に示し、日頃の練習の成果を公の場で試す絶好の機会を与えてくれた、という意味で大変意義深い試みであったと考えます。
通訳の訓練生はとにかくあらゆる機会にチャレンジし、できる限り「現場」に近い形での経験を積んでいくことが最重要です。今回優勝と準優勝を賜りました奥山裕太さんと永瀬礼奈さんもその点では常に大変積極的でした。履修済の実技科目にも再度聴講生として参加し、学内外における実習の現場では入念な準備と練習を積み重ねながら、率先して難しい仕事を担当して参りました。通訳のアルバイト募集を全員メールで送ると、間髪容れず「ぜひ挑戦したい」という頼もしい返信が一番先に戻ってくるのもいつもこの2人でした。今回こうして一緒に受賞させていただけたのは、「プロの通訳」を目指し大学時代4年間を懸命に頑張ってきたことへの嬉しい御褒美であっただけでなく、2人に続く全国の後輩達への力強いエールとなったのではないでしょうか。
【社会人部門】
グランプリ 石井悠太
この度、第1回同時通訳グランプリ社会人の部にて、グランプリという栄誉ある賞を頂きましたことを大変嬉しく、また光栄に思います。
今回、参加を決めた理由は二つありました。まず、私は、通訳学校ではなくオーストラリアの大学院で通訳を学び、社内通訳者としての仕事を始めたため、通訳者の知り合いがあまり多くありません。そのため、先輩通訳者や通訳業界の方々からお話をお伺いし、通訳現場の実情をもっと知りたいという気持ちがまずありました。そしてもう一つはフィードバックです。学校とは違い現場では、パフォーマンスに対する評価を受ける機会が少ないため、審査員や観客の方から直接フィードバックを頂くことで、パフォーマンスの向上に繋げられると考えました。
興奮と不安が入り混じる中で臨んだ本番でしたが、ブースに座った瞬間、集中力が高まっていくのを感じました。特に英日のスピーチの時には、耳から聞こえてくる英語と自分の訳が字幕の様に文字化されていくようなゾーンに入った感覚を味わいました。
実は予選のスコアはあまり芳しくなかったため、まさに想定外のグランプリ受賞ではありましたが、家族や友人だけでなく、大学院時代の恩師や現職の先輩方に喜んで頂けたことがとても嬉しかったです。「通訳になりたいという情熱とポテンシャルを見込んで」と、未経験の私を採用してくれた今の会社にも少しは恩返しができたかなと感じています。
最後になりますが、開催にあたりご尽力を頂いたJACI理事や審査員の皆さま、スポンサー各社様、その他関係者の皆さまに心より御礼を申し上げます。「若い通訳者にチャンスを」という、皆さまからの力強くも温かいエールを頂いた気がします。今後、同時通訳グランプリが第2回、第3回と歴史を重ね、多くの若手通訳者にとって挑戦の場となることを切に願い、受賞者コメントとさせて頂きます。改めまして、この度は誠にありがとうございました。
準グランプリ カークブライド椎奈
審査員特別賞 神田雅晴
第一回同時通訳グランプリは、ブースの中で通訳している時間は日英10分弱事、しかし10年後の自分を変える一日になりました。
普段は大阪の通訳学校でクラスメイトと学習をしており、また時折外部の学習会にもお邪魔させていただき学習を続けているのですが、自分の実力を知るために当グランプリに応募させて頂きました。グランプリ当日は多くの通訳者の方、通訳を学ぶ学生、エージェントの方々が、スピーカーではなく通訳者をメインに聞きにきていることから、普段とは違なる雰囲気があふれ出ていました。
通訳界の重鎮である審査員の方々やファイナリストの方々がレシーバーに意識を傾けるなかでの自分の通訳は、会場には必死に落ち着いた声色を届けようと取り繕うも、ブースと脳内は極度の緊張に満たされていました。しかし、他の通訳者様の目が覚めるような通訳に触発され、自分の訳出へ意識と集中力が高まり、結果として非常に良いパフォーマンスに繋がりました。
グランプリ後の懇親会では、著書やインタビューでお名前を伺い知る先達の方々、普段直にはお会いできないエージェントの方々から貴重な講評や温かいお言葉をいただける素晴らしい時間をすごしました。通訳の技術を数値化して審査する。誠に難しいことですが、こういった会をきっかけに通訳者に対する職場での正当な評価や、それを通した実力にあった場所で経験を積めるような環境にも繋がることかと思います。
現在社会人、或いは学生として通訳スクールに通われている方や、自分で学習を続けている方、自身の今までの努力や経歴がどこまで通用するのかを図るためにぜひ出場をお勧めします。
自分の様な通訳界の末席に名を連ねている一介の通訳者にとっても、業界全体にとっても非常に素晴らしいグランプリに参加させていただき、また賞までもいただけたこと、日本会議通訳者協会の皆様に深く感謝いたします。
【実行委員長のメッセージ】
日本会議通訳者協会理事 千葉絵里
同時通訳グランプリチームにてプロジェクトの全体マネジメントを担当しました千葉よりご挨拶を申し上げます。まずは入賞者の皆様、おめでとうございます!皆様の熱意と能力の高さに圧倒されました。審査員の皆様も、順位をつけるのにさぞかし悩まれたことでしょう。惜しくも入賞を逃された方も、タイトルやちょっとしたヒントしか与えられないという過酷な課題設定の中、ぶっつけ本番とは思えないパフォーマンスでした。記念すべき第一回同時通訳グランプリの栄えあるファイナリストとして、今後も自信を持ってご自身の道を進んでいって下さい。
プロジェクトの構想より約10ヶ月。ここまで本格的な同時通訳のコンテストは国内初ではないでしょうか。プロジェクト・メンバーは1名を除き全員現役通訳者であり、本業の合間をぬって準備を行いました。試行錯誤を重ねましたが、無事終了できました事、グランプリに関わった全ての方々に、心から感謝しております。
施設使用をご許可下さった東京外国語大学さま、グランプリ開催過程で懇切な指導助言を賜った鶴田知佳子教授に心より御礼申し上げます。まだ本グランプリが海のものとも山のものともつかない段階からゴールドスポンサーになって下さった、株式会社ホンヤク社さま、当日の機材をご提供いただいたのみならず、「音量の大小で不公平感が出ないように、聞き手の皆さんにご負担が少ないように」ときめ細かな音声調整をしてくださった株式会社バルビエ・コーポレーションさまのご協力なくしては、グランプリの実施は不可能でした。スポンサーのM&Partners Internationalさま、副賞を提供いただいた株式会社ディプロマットさま、ご後援いただいた株式会社アルクさま、イカロス出版株式会社さまにも、謝意を表します。
本選のスピーチはすべて本大会のための書き下ろしなのですが、時間をかけて素晴らしいスピーチを準備してくださった庄司香教授をはじめとするスピーカーの皆様、心より感謝しております。特別審査員・原不二子先生をはじめとする審査員の皆様にも多大なるご協力を賜り感謝にたえません。貴重なお時間と皆様の専門知識をご提供いただき、また会社のリソースを割いて、本グランプリにご支援・ご尽力頂きましたこと、改めて深く御礼申し上げます。現役通訳者仲間である学生部門審査員にも言及させてください。繁忙期の真最中にもかかわらず、審査員を務めてくださりありがとうございました。リハーサルの時間も殆どなくご負担をおかけしましたが、本選ボランティアの皆様のおかげで大会運営がスムーズになりました。そして、予選から競技にご参加いただいた皆様、熱心に通訳に、スピーチに耳を傾けてくださった聴衆の皆様。皆様の熱意が、私たちにとって大きな励みになりました。