第2回 同時通訳グランプリ 入賞者の声
【学生部門】
グランプリ 春田僚子(国際基督教大学)
この度、第二回JACI同時通訳グランプリに参加できたこと、大変嬉しく思います。
大学で通訳の勉強をしてきましたが、本格的なブースで、さらに日英・英日両方向での同時通訳ということで、本選前にはとても緊張しておりました。実際にブースに入ってみると、オーディエンスの皆さまが見えることもあり、心拍数が上がったように記憶しています。直前に先生がおっしゃっていた「聞き手のことを考えて」という言葉を、何度も頭で唱えながら本番にのぞみました。特に英日通訳では、事前準備に時間を割いたにも関わらず、怒涛のように聞こえてくる数字や専門用語に圧倒されてしまいました。何が飛び出すか分からない、ブースに入ってしまえばあとは全力を尽くすのみ、という通訳の難しさを思い知らされた気がします。と同時に、通訳の楽しさも再認識することができました。
このような機会をいただいたおかげで、学校での練習だけでは気付けなかった数多くの課題が見えました。また、通訳の先輩方のパフォーマンスを聞けたことも、とても刺激になりました。これからも、スキル向上に努めてまいりたいと思います。
最後になりますが、グランプリを企画・運営してくださったJACIの方々、並びに関係者の方々、このような素敵な場を設けていただき、誠に感謝しております。また、大学でご指導くださる先生や、大学で一緒に通訳を学んでいる仲間、参加者の皆さまにもお礼を申し上げたいと思います。本当に、ありがとうございました。
■指導教員 田村 智子 国際基督教大学客員教授 (通訳翻訳学)
第1回目の昨年に続き、今年もこのように学生の部・社会人の部で同時通訳グランプリが開催され、国内外から多くの参加者が日頃の成果を競うべく奮闘されました。見事に予選を通過し決勝に臨まれた8名の皆さんはもとより、予選通過を目指し懸命に準備と練習をなさった全ての参加者の皆さんに拍手をお送りいたしたいと思います。
また長年の待望の声に応える形で昨年ようやく実現したこの「同時通訳グランプリ」をさらに確固たるものにしていくために、今年も様々な御努力を続けてこられたJACIの皆様に、改めて深く感謝を申し上げたいと思います。「同時通訳」という、単にバイリンガルというだけでは太刀打ちできない高度な専門技能が前提となるこのような大会に、毎年多くの参加者を募ることは、並大抵のことではないと推察いたします。しかし、優秀な人材発掘と確保が常に喫緊の課題である通訳業界がこれからも安定した発展を遂げていくためには、本大会のようなイベントを毎年継続していくことが非常に重要であるのは言うまでもありません。主催者であるJACIの方々のこの職業に対する誇りと信念があるからこそ、このような大会開催が可能になっているのであると考えます。
今年もおかげ様で所属先である国際基督教大学の担当学生が優勝を賜るという幸運に浴することができ、受賞した春田僚子さんの日頃からの真摯かつ緻密な事前準備や練習への取り組みが評価して頂けたと大変嬉しく思っております。また今回惜しくも受賞が叶わなかった皆さんも、同グランプリの予選を通過し決勝への参戦を成し遂げたこと自体が既に大いなる成果であった、ということに自信を持たれ今後の更なる精進に繋げていってほしいと思います。更に今回挑戦され惜しくも決勝進出に届かなかった国内外の参加者の皆さんも、予選のための懸命な準備・練習は既に皆さんの更なるスキル向上に繋がっております。全てのステップが、結果いかんにかかわらず貴重な学びの機会なのです。
改めまして昨年に引き続きこの第2回同時通訳グランプリの企画・準備・運営に奔走されました主催者であるJACIの皆様に深謝いたしますと共に、こちらも大変お忙しい中、大会当日長時間に渡って審査員を担当されました、東京外国語大学名誉教授・東京女子大学教授の鶴田知佳子先生を始めとする審査員の皆様全員に、厚く御礼を申し述べます。
準グランプリ 福谷昌子(Middlebury Institute of International Studies at Monterey)
この度の第2回同時通訳グランプリは、私にとって非常に価値ある体験となりました。JACI運営の皆様、ならびにグランプリ成功のためにご尽力くださったすべての関係者の皆様に心より感謝申し上げます。
「通訳が主役の場で通訳する」というのは、学校の試験とはまた違った緊張感がありました。最初の日英セッションでブースから会場を見渡すと、大勢の方がグランプリを見にいらしていて、少し緊張に圧倒されてしまいました。同時に、これほど注目度の高いグランプリでファイナリストとして通訳できることを非常に光栄に思い、今できるベストを尽くそうと思い臨みました。英日は準備不足が悔やまれますが、その中でも大学院で教わったことを意識しながら集中力を高めていくことができたので、2年間の訓練を生かすことができたのを感じたセッションでもありました。1年半前に初めて同時通訳を学び始めた頃は、ブースの中で一言も訳せない日もあったので、最後まで私を見放すことなく教えてくださった大学院の先生方に心から感謝しています。そのような意味で、今回の準グランプリという結果を通して、これまで支えてくださった方々への恩返しの第一歩が踏み出せたような気がします。
このグランプリで得た何よりの財産は、他のファイナリストの方々やベテランの通訳者の方々との出会いです。普段このように他の通訳者の方の訳出を聞いて勉強させていただく機会は少ないですし、国内外で活躍される一流通訳者の方々にたくさんの興味深いお話を伺うこともでき、学びの多い充実した一日となりました。これからもこの出会いを励みに、通訳としてさらに成長していけるよう精進してまいります。
この度はこのような素晴らしい機会をいただき、誠にありがとうございました。
【社会人部門】
グランプリ 高木久理守
同時通訳ファイナルの日。久しぶりの勝負にワクワクと緊張の混ざった心境で会場の扉を叩きました。控え室では初対面ではあったものの、ツイッター上でやり取りさせて頂いていたファイナリストさんも居た事もあり「ピリついた雰囲気かも」との懸念もなんのその、すぐにフレンドリーな空気感で過ごすことができました。またJACIメンバーの先輩方も控え室に頻繁に登場し、我々の緊張度合いをいじって頂けた事で、逆に緊張をほぐすことができたのは有り難かったです。
大会ではファイナリストの通訳者さんの高レベルな仕事ぶりを目の当たりにし、多くの刺激を頂きました。世界は広い、そしてスキルの高い通訳者さんから学ぶべきものは多い、そう感じると共に「通訳の奥深さと面白さ」を再認識しました。
また本選ではハプニングもありました。当日の話者として当たりをつけて調べていた「北斗の拳」関係のゲームクリエイターさん。いざ登壇されると、全然見た目が違う。。。なんと同姓同名の別人だったのです(笑)。用意した北斗の拳関係の用語リストは全くの無駄になり、大会の出っぱなからまさに脳天の秘孔を突かれたようなショックでした。それでもshow must go onと言うことでパートナーの通訳者さんと顔を見合わせて苦笑いでなんとか乗り切れたのは良い思い出です。
受賞して特に嬉しかったのは多くの人に祝福していただいた事でした。この歳になるとトロフィーを貰う事もかなり珍しくなるので純粋に嬉しいですね(笑) また、ありがたい事に、受賞後エージェント様や出版関係者様からお声をかけていただき新しい機会を得ているので、これを機に様々なチャレンジをしていきたいです。ありがとうございました。
準グランプリ ベッカーマン・ゲイブ
私は特定の目的に向かっていると勉強が捗るタイプですので、同時通訳グランプリのことを知った瞬間に応募を決断しました。また、現在は社内通訳を務めており、違う環境で通訳をするという意味でも、とても良い機会になりました。
予選のテーマが公開されてから、いつものシャドウイングや音読練習にできるだけテーマに関連する記事やポッドキャストを使いました。普段の社内通訳は、社員同士の通訳をすることが多いので、投影資料など関連情報をすぐ手に入ることができますし、自分の専門外の内容について理解を深めたいときは直接聞くことができますが、本選はテーマとスピーカーといった限られた情報しかありませんでした。予選でいただいたフィードバックを意識しながら、本選まで練習を重ねました。浅く広く、関連しそうな単語をピックアップし、単語リストを作成し準備をしました。
当日は最初日英でした。内容は社内通訳としてやっているものと似ていたおかげで少し緊張感が溶け、話の筋を予測しながら落ち着いて通訳することができました。しかし、英日のプレゼンは全く違い、話がどこに行くかあまり予想できず、かなり苦労しましたが、とにかくストーリーを頭の中で描くようにし、ベストを尽くしました。
待機の時間に他の参加者とたくさん話すことができ、競争相手なのに全員ともとてもフレンドリーだったことが印象に残り、通訳仲間が増えたこともとても嬉しく思いました。また、切磋琢磨できる環境を提供していただいたことに加え、本選で通訳をして終わるのではなく、表彰式で審査員から直接フィードバックをいただいたおかげで、より勉強意欲が湧きました。今後も様々なJACIイベントに参加できることを楽しみにしております。非常に有意義な経験をさせていただき、大変感謝しております。
【実行委員長のメッセージ】
日本会議通訳者協会理事 小野陽子
入賞者の皆様、おめでとうございます。
さすが「我こそは」という思いで応募されただけあって、予選から審査員を悩ませるほど優秀な方がたくさんいらっしゃいました。応募者数も昨年を上回り、ファイナリストの選出は困難を極めました。ですがその分、素晴らしいグランプリになることが予想され、大きな期待と共にグランプリ当日を迎えました。その結果、昨年に勝るとも劣らないレベルの高い本選となりました。ファイナリストの質の高いパフォーマンスに、感銘を受けると共に脅威も感じました。惜しくも入賞を逃した方もファイナリストに選ばれたこと、入賞者と肩を並べて張り合ったことを誇りに思っていただきたいと思います。
グランプリ終了後にファイナリストの何人かとお話させていただきましたが、皆さん非常に真摯に自分と向き合い、日々努力を重ねていらっしゃる様子で身が引きしまる思いがしました。会場で行ったアンケートにも現役通訳者から「よい刺激を受けた」などのコメントがありました。これから活躍しようという若手通訳者にチャンスを与えるのみならず、長年経験を積んだ通訳者にとっても初心にかえったり、刺激を受けたりする良い機会になったとしたら非常に嬉しく存じます。
この場を借りて、施設使用について多大なご支援をくださり、グランプリでも特別審査員としてトロフィー授与および総評をくださった鶴田知佳子教授、また、スポンサーとしても審査員としても多大なご支援をくださった有限会社M&Partners Internationalの桃原則子様、審査員としてご参加くださった株式会社テンナイン・コミュニケーションの工藤浩美様、ブレインウッズ株式会社の笹波和敏様、株式会社蛇滝商会のデレック・ウェスマン様、BuildingLink Japanのスコット・ドリガーズ様に心よりお礼を申し上げます。
また、審査員が通訳者の声をしっかり聴けるようにと、特別のヘッドセットをご用意くださるなど、昨年同様にきめ細かなご支援をいただいた株式会社バルビエ・コーポレーション様にも感謝申し上げます。
そしてスピーカーの皆様。川上洋子様、佐藤大輔様、トム・エスキルセン様、クリス・コザック様、本選のために貴重な時間を割き、オリジナルのスピーチを作成くださり、誠にありがとうございました。いずれも興味深く素晴らしいスピーチでした。
皆様のご支援のおかげで第2回同時通訳グランプリは成功裏に幕を下ろすことができました。皆様どうもありがとうございました。