第9回|発表!!アプリ大賞☆

update:2017/04/28

時は4月。時節柄か通訳する内容も昨年度の振り返りが増える今日このごろ。昨日の会議でも「サプライヤー優秀賞2016」なる表彰がありました。そんなわけで、私もちょっぴり真似をして、昨年度お世話になったアプリの中から(勝手に)表彰し、開発者の皆さんの日々のたゆまぬ努力に感謝の意を表したいと思います。…といっても何も出ませんが…(笑)。

今回は「改善」と「効率」の2項目を評価し、それぞれの大賞を選出。そして筆者の日々の業務に総合的に最も大きく貢献したと思われるものに最優秀賞(グランプリ)を贈りたいと思います。

さっそく各大賞から。

「改善大賞」は、元々素晴らしいアプリであるのはもちろんのこと、それに甘んじること無く改良を重ね、通訳者にとって便利でありがたい機能を追加してくれたアプリに贈られます。

2016年度の改善大賞は…

さいすけ2(iOSのみ)

デベロッパ:Mobile Saysoft,Inc.

こちらは以前「リレーコラム」でもご紹介したカレンダーアプリ「さいすけ」の後継バージョンです。初代にはない便利な機能が数多く追加されていますが、特に嬉しかったのが「予定に画像を添付できる機能」でした。

派遣会社から仕事を請けると、その業務の重要事項(クライアント名、待ち合わせの時刻と場所、予定終了時刻、同時や逐次などの通訳形態など)が書かれた指示書のようなもの(「ジョブレター」や「業務連絡表」、「依頼票」など、呼び名はいろいろです)が送られてきます。場合によってはチームを組む通訳者の名前やドレスコード、お弁当支給の有無などの情報も書かれていたりします。

この「指示書」をカレンダーにひも付けて管理する方法は、これまでもあるにはあったのですが少々ややこしく、もっと効率的にできないかずっと模索していました。

この機能が追加されたおかげで「指示書」の画像(スマホのスクリーンショットや印刷物の写真)を貼り付けるだけで済むようになりました。(操作方法については開発者のサイトを参照のこと)貼り付けた後はその画像をスマホ本体から削除しても大丈夫です。

画像データなら何でも貼り付けることができるので、ウェブサイトやメールの文面のスクリーンショット、案内ハガキの画像、婚活中の方はその日に会うお相手のプロフィール写真(笑…いや、笑い事ではありませんよ。間違えたら大変!!)など、「指示書」以外にも色々使えると思いますよ。

写真の機能を使おうとするとフル・アップグレードが必要で有料となりますが、旧「さいすけ」の有料版ユーザには優待価格(本稿執筆時点では半額の600円)が適用されます。アプリにこの金額を出すのは少々気合いが要りますが、かつては紙の手帳に毎年これ以上の金額を払っていたことを思えば、決して高すぎる買い物ではないですよね。

この「さいすけ」シリーズはアンドロイド非対応で申し訳ない限りなのですが、「さいすけ」同様に人気のカレンダーアプリ「ジョルテ」も写真を予定に添付できるようですので、興味のある方はぜひ試してみてください。

続いて「効率大賞」です。

効率大賞は、筆者の日々の業務の効率改善に大きく貢献してくれたものに贈ります。なんと受賞アプリは二つ!

一つ目は…

IFTTT

デベロッパ:IFTTT

Dropbox、Evernote、Gmail、Googleカレンダー、LINE、Instagram、株価、天気予報などなど、その他たくさんのウェブサービスを組み合わせて自動化するアプリです。

”If this then that”(プログラミング系の仕事をしたことのある人にはおなじみ、いわゆる「if~then文」)の頭文字から名付けられました。「ああ言えばこう言う」…じゃなく(笑)「こう」なったら「ああ」せよ、という命令ですね。「this」と「that」に色々なウェブサービスの動作をあてはめて組み合わせを作ります。この組み合わせを「アプレット」、「This」はトリガー(きっかけ)、「That」はアクション(行動)と呼びます。自分で組み合わせを作っても良いし、既製の組み合わせをそのまま、あるいは少し変えて使えるものもあります。操作は全て英語です。

これを使えば「Gmailに添付文書がついていたら、Dropbox(GoogleDriveやEvernoteでもよい)に保存する」、「明日の天気予報が雨だったらGmailで知らせる」、「朝6時に円ドルの相場をLINEで知らせる」など、複数の作業を自動化できるのです。操作は「+」サインを押して好きなウェブサービスや動作をリストから選ぶだけです。

似たようなアプリにmyThingsがあります。

myThings

デベロッパ:Yahoo Japan Corp.

Yahoo!が提供しており「IFTTTを日本人が作るとこうなる」という感じですね(笑)。対応サービスに応じて好みのものを選んでもよいし、両方使っても良いと思います。

さて、続いて2つ目の「効率大賞」は…

LINE Notify

こちらは厳密にはアプリではなくLINEの一機能で、自分宛てに通知を送ることができるもの。前述のIFTTTやMyThingsと組み合わせると、「IF」のトリガーに対応するアクションとして「LINEで通知を受け取る」ことができるのです。初期設定の方法はいくつかありますが、IFTTTでアプレットを作るときに連携先としてLINEを選び指示に従って操作する、あるいはここで紹介したリンクのページからログインして設定します。

こうしていったん設定してしまえば、自動通知を受け取るだけでなく、自分宛てにメッセージを送ることもでき、これが意外と重宝するんです。

メッセージ以外にも、乗換案内や音楽認識アプリなど、共有ボタンからLINEで友達に知らせることのできるサービスなら何でも転送できます。例えば、買い物をしていてお店で面白いBGMが流れて来た時、Shazamを起動し、認識結果をLINE Notifyに転送する、などしておけば、その場でアクションを取らなくても後からゆっくりチェックすることができますよね。

もちろん、これらはいずれもLINE Notifyでなければできないことではありません。Shazamには履歴が残るし、メモやToDo、メールソフトのフラグなど、忘れてはいけないことをメモしておく機能はほかにも数多くあります。ただ、私の場合はメモしたこと自体も忘れてしまうので(笑)…。家族や友達とのやり取りで頻繁に利用し、既読するまでバッジ表示されているLINEは「ちょっとメモっておいて後から読む」のにちょうどいいんですよね。

さて、いよいよ「最優秀賞(グランプリ)」発表のお時間です!!

2016年度、栄えあるアプリ最優秀賞は・・・

ドラドラドラドラドラドラ…シャーーーン(←ドラムロールの効果音)

Just Quick Search

デベロッパ:Mill White
iOSAndroid

ウェブ検索アプリです。とにかくシンプル。このシンプルさがありそうでない!!シンプルでありながら、いや、だからこそかもしれませんが、スピーディーに検索できる工夫がぎっしり詰まっています。余計なボタンが一切無いので操作ミスも少ないし、通訳をしながら使うのに最適なのです。

Pは直前の検索語句、Bは後ろに、Fは前にカーソルを動かすためのキーです。設定の際にこれらは有効化しておいたほうが使いやすいと思います。(検索画面を左側にフリックすると現れる小さな★印をタップして設定画面に入れます。)検索画面の左上の「完了」をタップすると最初の入力画面に戻り、即座に次の検索が可能です。

通訳をしている最中に分からない言葉に遭遇したら、皆さんはどうしていますか? 別の言葉に言い換えが効かない、知らないとどうにもならない場合です。私はその場で意味を調べます。別のところを訳しながら何とか訳し終わる前に必死で意味を調べ、後から訳に(何食わぬ顔で、笑)滑り込ませるという感じです。

辞書を引いている最中はそこに脳の処理能力の一部を使ってしまうため、通訳のほうは予断を許さぬトリッキーな感じにはなりますが(運転中にスマホをいじったら事故を起こしやすいとのと同じ感じですね)楽器の弾き語りと同じく、練習すれば同時にできるようになります。なるべく辞書を引かなくてもすむように語彙を強化することはもちろん大切ですが、日々新しい言葉が生まれている中、全てをフォローするのは無理…というわけで、私は「訳しながら辞書を引く/辞書を引きながら訳す」のも訓練すべき重要スキルだと割り切っています(笑)。

ただ、通訳者が知らない言葉ともなると、固有名詞や造語、業界用語など、辞書にも載っていないことが多々あるんですよね。辞書に載っている単語は全て頭に入っているなんて豪語するつもりもありませんが、載っていなかった時の二度手間を考えると、最初からネットで検索したほうが速いんです。そんなわけで、私はスマホのネット検索技術の進化とともに少しずつ電子辞書を使う頻度が減り、ここ数年はスマホを預けないといけないような場所に立ち入る時以外は仕事に持っていくことすらなくなってしまいました(あくまで通訳現場での使用に限定したお話です。翻訳や学習目的でしたら、もっと別の手段が適しているかもしれません)。

ネット検索の利点は「探している結果が一発で出てくる(確率が高い)」ことですが、操作性となるとそれ専用に作られた電子辞書には敵いませんでした。Just Quick Searchはそのギャップを少しだけ埋めてくれるような気がします。

ただ、これを使いこなすとなったらフリック入力が出来ないとちょっと不便かもしれません。せいぜい1~2日で慣れてしまいますので、練習する価値はあると思います。また、英語⇔日本語をスピーディーに切り替えるために、不要なキーボード(絵文字など)を本体の設定で無効にしておくことも重要です(どうしても絵文字を使いたい場合には、それに対応するような語句を入力すれば変換候補に出てきますのでそこから選びます)。

というわけで、今回は「アプリ大賞2016」をお送りしました。どのアプリも活用シーンに合わせてアレンジすれば強力な生産性UPのツールとなってくれるはずです。ご参考になれば幸いです。

平山敦子

Atsuko Hirayama

会議通訳者。得意分野は司法、軍事、IT、自動車など。元米国大統領、経済学者など著名人講演の同時通訳も多数。この仕事を目指したきっかけは大学在学中のアルバイト。スポーツイベントのバイリンガルスタッフとして働いていたが、ある日現役のプロ通訳者と同席、その仕事ぶりを目の当たりにし衝撃を受ける。

「私もこんな風になりたい!」とアルバイトに精を出す(?!)うちに、いつしかそれが仕事に。通訳界では知る人ぞ知るガジェットおたく。パフォーマンスを最大化してくれる優れモノの道具を求め日々研究中。