第10回|通訳者も、そうでない人も。ちょっと嬉しい文房具

update:2017/06/12

ここのところアプリ関連の話題が続いていたので、今回は非電脳系グッズのご紹介です。日々の業務にプラスして、来たるべき梅雨も明るく乗り切りましょう!

さて、今回のトップバッターは・・・

ステッドラー テキストサーファー・ゲル

リップクリームのように繰り出して使う固形タイプの蛍光マーカーです。「キャップを外したまま放置しても乾燥して書けなくなったりしない」というのが一番のセールスポイント。がしかし、それ以上にこの独特の書き味に私はすっかりハマってしまいました。

キャンディーカラーのペン先は、見た目は透明な石鹸のような質感。紙に滑らせると「ヌルッ」と「するするっ」を足して2で割ったような感覚に新鮮な驚きと感動を覚えます。筆者もサンデーサーファーの端くれ(すなわちサーフィン界の端くれの、そのまた端くれの端くれ、笑)ですが、確かにその名の通り、この書き味は「テイクオフしてボードが水面を滑っていく時の足裏の感覚」にちょっと共通するものがありますぞ。ネーミングを決める会議ではどんなやり取りがあったのでしょう。のぞいてみたかった!!

薄い紙でも裏写りしない、鉛筆書きをなぞっても黒くにじみにくいなど、この商品の実用的なメリットは他にもいろいろあります。でもそれだけなら、ここまでリピートすることもなかったでしょう。この「テキストサーファー」は、たかが「線を引く」という当たり前の作業にワクワクを与えてくれました。そこが一番のポイントかもしれません。

通訳者によって蛍光ペンの定番色は違うようですが、私はピンクと黄色を使うことが多いです。キーワードとその訳語はピンク、「このページの言わんとすることは、この一文に凝縮されてるな」というような箇所は黄色、と使い分けています。

以前「動詞を青でハイライトしている」という通訳者さんがいて、それ以来私も真似をしています。「何が・・・どうした」の「どうした」にあたる動詞をしっかり押さえておくことで、前半部分を安心して訳すことができるんだそうです。「広げたフロシキをいつでもたたむことのできる安心感」とでもいいましょうか(笑)。青(水色)を選んだセンスも素晴らしいと思いました。その理由を説明するのは難しいのですが、「ピンクや黄色より目立たないけど珍しいから目につく」ところが感覚的に合っているのでしょう。

お次は、もう10年以上はお世話になっている定番商品を2つ。

OHTO スライドクリッパー

OHTO購入サイト

※上記リンク先のページに進み、左側の「事務小物」の項目の「クリップ」→「スライドクリップ」と順にクリックするとスライドクリップの掲載ページに進みます。

CROWN ダブルクリップ フラットタイプ

どちらもクリップでありながら端がまっすぐなので、紙の束をその場で「ホチキス感覚で」とじることができます。私はこのクリップを常に何個か携帯していて、紙の枚数に応じて使い分けています。

講演やプレゼンでは使用するスライドのコピーが通訳者にも共有されます。日本語版と英語(外国語)版の両方が用意されることもしばしば。両方もらえるのはありがたいし、ないと困るわけですが、通訳しながら2冊の資料をめくっていくのはなかなか大変です。また、同時通訳ブースや会議室の机にはA4判の資料を2冊も並べて広げるスペースはありません。

そんな時にオススメなのが、右の写真のように日本語と英語を、それぞれの紙の表が向かい合うよう交互にとじるという方法(※写真は某企業様がネット公開しているIR資料を拝借して作ったダミーです)。

昔、ペアを組んだ先輩がこうやっているのを見て、それ以来ずっとまねしています(…まねしてばかりですね。笑)。ページをめくる時は2枚ずつめくっていきます。こうすると、日本語版と英語版を同時に見渡すことができるし、めくるアクションが1回で済むので、訳すことに集中できるんですよね。

ただ、このようにとじると表紙がどうしても下を向いてしまい、プレゼンが複数ある場合にどれがどれだか区別がつかなくなってしまいます。そんな時は、下の写真のように1枚目だけ折り返しておくと解決しますよ(なんとマニアックな裏技…笑)。

マニアックといえば「日本語版と英語版どちらを上にするか」も重要な問題です。以前はソース言語(演者が話す言語)とターゲット言語(通訳者が訳出する言語)で配置を変えていましたが、最近は常に日本語を上(自分から遠い方)にしています。日本語のほうが英語に比べて視覚的なので、離れたところからも目当ての語句を見つけやすい気がするからです。

最後にご紹介するのは、進化系ふせん(・・・と勝手に名付けました)です。

右上から時計回りに

3M シルエットデザインシリーズ 吹き出し

クラスタージャパン株式会社 蛍光クラフトフセン

株式会社ロジック メッセージカードふせん

文房具売場の付箋コーナーに行くと、今すごいことになっています。まさに百花繚乱。オフィスの一服の清涼剤として進化していったのでしょうが、自営業者もこれを利用しない手はありません。

自分の仕事は「通訳とその準備」で、それ以外の事務作業をどうしても「面倒くさい余計なこと」と考えて後回しにしてしまいがち。・・・なんて、私だけではありませんよね(笑)。でも請求書を送らなければお金は入ってきません。派遣会社に登録したら契約書が紙で送られてくることもあります。いくらアプリやメールが発達しても、どうしても避けては通れない紙のやり取り…。

ちゃんとしたカバーレターを作るのは面倒くさいけれど、付箋に「よろしく」一言だけ、というのも手抜きな感じで気が引ける・・・。そんな時に活躍するのが「進化系ふせん」です。

ちょっと凝った付箋を使うことで、不思議と心がこもって見える・・・これ、まさに料理でいう「鰹節」と同じ原理。西洋の料理で出汁を取ろうとすると、仔牛やら鶏やらの骨を何時間も煮込まなければなりませんが、鰹節はさっと水で煮るだけ。

それでいて、フォンドボーや鶏ガラスープに匹敵するような複雑な旨味を料理に与えてくれます。なぜそんなことが可能かといえば、乾燥やいぶし、カビ付けなど、旨味を凝縮するプロセスを職人さんがやってくれているからにほかなりません。「進化系ふせん」は「鰹節文具」(笑)。どんどん活用して、浮いた時間を「本業」に使いましょう!

TVでも紹介されたようですが、最近はこんなものまで・・・。

イケメン付箋

提出期限を過ぎた請求書も、イケメンの力を借りれば経理担当の方は笑って処理してくれるのでしょうか・・・。あ、使用はあくまで自己責任にて(笑)!!

早いもので、この連載も今回で10回目となりました。これまでご愛読してくださった皆様にこの場を借りて心からお礼申し上げます。長いようであっという間だった10カ月。これまでの思い出が走馬灯のように・・・ウッウッ(涙)・・・あ、別にこれが最終回ではありませんよ(冷や汗)!!今後もますますパワーアップしてお届けしてまいりますので、何卒よろしくお願いいたします!!!

【お知らせ】
現在発売中の『Domani』7月号(小学館)にワタクシ平山敦子が「アプリ賢者」として登場! デキる女性にオススメのアプリをビシバシ紹介しています。書店でぜひ、チェックしてみてくださいね!!

平山敦子

Atsuko Hirayama

会議通訳者。得意分野は司法、軍事、IT、自動車など。元米国大統領、経済学者など著名人講演の同時通訳も多数。この仕事を目指したきっかけは大学在学中のアルバイト。スポーツイベントのバイリンガルスタッフとして働いていたが、ある日現役のプロ通訳者と同席、その仕事ぶりを目の当たりにし衝撃を受ける。

「私もこんな風になりたい!」とアルバイトに精を出す(?!)うちに、いつしかそれが仕事に。通訳界では知る人ぞ知るガジェットおたく。パフォーマンスを最大化してくれる優れモノの道具を求め日々研究中。