【第14回】現役通訳者のリレー・コラム「通訳者こそ読まなければならない本があるんです」
(執筆・知念徳宏)
言葉というものがその話者の個人的背景を背負って出てくるように、言語もまた、その言語圏の文化的背景を背負って成り立っています。そういうわけ で、たとえA言語圏におけるある言葉が、A言語圏の人たちにとって琴線に触れるようなものであるからといって、それを他の言語圏から来た人々に、A言語圏 に属する人と同じような感動を味わってほしいと思って通訳をしようとしても、なかなかうまい表現が見つからないということはしばしばあります。そこを何と か伝えたいと思って日々悪戦苦闘をしているのが私たち通訳者や翻訳者なのではないでしょうか。
このような言語の文化的背景を踏まえた表現を模索するのは、翻訳をする場合には訳出するまでに時間があるために、様々な検討、研究を重ねて より良い表現にしていくことも出来るのですが、(もちろん時間があればの話ですが…)通訳者となると現場ではなかなかそういった時間が取れません。この とっさの判断で適切な訳出ができるようにするためには、普段からそのような表現をどう訳出すればいいか、と見聞を広めることで自らの語彙力向上に努めるこ とぐらいしか対応策はないのではないかと思います。