【第23回】現役通訳者のリレー・コラム「日英同時通訳で気を付けること」

(執筆・トム・エスキルセン

表題のテーマで執筆を依頼された時、日本で宣教師をしていた父がよく言っていたことを思い出しました。たまに日本人牧師と欧米人宣教師が会議をする時、牧師が英日、宣教師が日英の通訳をすることが多かったそうですが、話がちぐはぐになったり、逆の意味で訳されたりする場面を父は何度も見てきたそうです。通訳の基本は、話し手の意図を理解し、忠実に伝えることなので、アウトプットが多少稚拙でも、母国語から第二言語に訳すのを基本とすべきだというのが父の持論でした。何度も力説していたほどですから、よほどのすれ違いが起こっていたことと想像します。

国連の同時通訳では、中国語とアラビア語を除き、母国語への訳出が基本のようですし、翻訳業も同様です。私も日英ウィスパリング業務を依頼されることが多く、ネイティブの発音が好まれることがあるようです。しかし、本当はどちらが正論なのでしょうか。

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