第11回|困った時のお助けアイテム(前編)

update:2017/07/14

先日、家と車の鍵を失くしてしまいました。幸いすぐ見つかったのですが、出てくるまでの数日間、あちこち電話をしたり探しに行ったりで大変でした。仕事柄、毎日行く先が違うし、利用する交通機関も違う。ランチのお店もしかり。とにかく心当たりが多すぎるのです。

自分のロッカーやデスクなどありませんから、私物は全て自分のカバンに入れて運ばなければなりません。仕事が終わったらさっさと撤収しなければならないし、クライアントに同行して複数の商談先を回ることも。移動中は自分の都合(ペース)で動けないことだって多々あります。

言い訳じみてしまいますが、自宅と会社もしくは学校との往復が主な方たちに比べ、通訳者は格段に忘れ物をしやすい条件が揃っているんじゃないでしょうか。しかもいったん何かを失くしたら探すのに一苦労です。

というわけで、今回のテーマは「困った時のお助けアイテム」。忘れ物はもちろん、通訳者を見舞うであろう様々な「困った」をガジェットで解決していきます。

「困った」その1 ~大切なアレが見当たらない!!~

ただ、冒頭のお話にはオチがありまして…。鍵はなんと、その日使っていたバッグの中から出てきたのでした。隠しポケットのような、普段は全く使っていなかったポケット。何をどうしたのか、無意識にそこに入れてしまったんですね。そのポケットは存在すら忘れていたので、鍵を探す時にはすっかり見落としていました。

いや、考えてみれば、忘れ物でも何でもない、単なる「人騒がせ」エピソードでございますね(笑)。

これから紹介するのは、そんな失敗を踏まえ、筆者が購入したグッズです。あの時これがあったなら、大変な思いをしなくて済みました。色んな方の手を煩わせることもなかったでしょう。

探しモノ発見 スマートアクセサリー ”ウィスティキ

「ウィスティキ」はBluetoothでスマホと連携して使うスマートタグ(キーホルダー型発信機)です。スマホから呼び出し音を鳴らしたり、アプリ上の地図で忘れ物をした場所の位置を確かめたりすることができます。

発信機と聞くと、犯罪に悪用されるのではないかと心配になりますが、そこのところはうまくできています。ウィスティキ本体にGPS機能はなく、スマホと定期的にBluetoothで通信し合い、通信した場所がクラウドGPSに記録される仕組み。すなわち、刑事ドラマに出てくる「身代金のアタッシュケースに仕込んだ発信機」のように常に居場所を知らせるのではなく、スマホとウィスティキが離れ離れになる直前の場所(=忘れ物をした場所)が分かるというもの。これなら「一日に5件商談をハシゴした」なんて時に、どの会社に忘れ物をしたのか分かりますね。

でも一番重宝するのは、やはりスマホから呼び出し音を鳴らす機能ではないかと思います。筆者のように家の中でよく物を失くす、という方には特にオススメ。このほか、スーツケースにつけておくと、空港のターンテーブルで近づいてきたら知らせてくれる、なんて機能もあるようです。

電池交換不可で寿命は約2年。価格は店舗にもよりますが、だいたい5,000円~6,000円強です。これだけの金額をかけて使い捨てのデバイス(モノ)を買うというよりは、約2年間の探し物発見サービス(コト)への対価と捉えたほうが良さそうです。

「困った」その2 ~もう出かけなきゃならないのに携帯電話が消えた!!~

誰かに電話をかけてもらえば早いのですが、一人でいる時にはそうもいきません。せっかく鳴らしてもらっても着信音をオフにしていたら聞こえませんしね。

そんな時、そう、Apple Watchならね(笑)。ボタンひとつでiPhoneを鳴らすことができるんです。たとえ着信音がオフになっていても大丈夫。ちゃんと鳴ります。Apple Watchの機能は数あれど、筆者が一番重宝しているのは、モバイルSuica以外では実はこれかも…?!それだけではありません。iPhoneとの接続状況が画面に表示されるので、家を出てから「あれ、携帯持ったっけ」と不安になったとき、カバンの中を探さなくても一目で分かるんですよね。

(文字盤を上向きにワン・フリックすると現れる画面。青の矢印のボタンをタップするとiPhoneを鳴らすことができます。画面左上にある「Connected」という緑の文字は近くにiPhoneがあるしるし)

Apple Watchを持っていなくても、いやそれ以前にスマホがiPhoneでなくても心配ご無用。ここでもウィスティキが活躍します。スマホからウィスティキを鳴らすだけでなく、ウィスティキのボタンを押すことでスマホを鳴らせるんです。同じく着信音をオフにしていてもOKです(ただし、ウィスティキのアプリがスマホのバックグラウンドで立ち上がっていることが条件です。さすがにここは非純正デバイスの限界を感じてしまいます)。

えっ、ウィスティキも持っていない?!いや、あきらめるのはまだ早いです!携帯電話を失くしてしまったときにパソコンから位置情報を調べる方法がありますが、その中になんと「PCから着信音を鳴らす」という機能があるんです。詳しくは以下のオフィシャルサイトを参照するか「iPhone(またはAndroid)をPCから鳴らす」と検索してみてください。個人の方のブログで詳しく解説しています。

いずれも事前設定が必要ですが、油断は禁物。何事も転ばぬ先の杖です。筆者のように物を失くしやすいと自覚している方は、ぜひ、やってみてくださいね。

困ったその3 ~スマホがメチャ遅くなった!~

今月も残り数日という時に、ウェブサイトもろくに表示できないほど通信が遅くなってしまうことがあります。その月の通信パケットを使い果たしてしまった、いわゆる「パケ死」状態。

こんな時、趣味でしかネットをしないなら、月が変わるまでじっと耐えて待つのでしょう。仕事となるとそうもいきません。移動中、メール添付で送られてきた資料に目を通したり、講演者の過去の動画を閲覧したり。あるいは通訳現場で、辞書に載っていない用語を検索したり。どうしても「今」やらないといけないことばかりです。

「Wi-Fiルーターを持ち歩く」「公共のWi-Fiホットスポットを利用する」など、予防にまさる対策はないわけですが…。使い果たしてしまったものは仕方ない。お金で解決できるものなら何とかしたい。そんな時ってありますよね。

そこで役に立つのが、モバイル各社が出しているデータ追加購入アプリです。まるで衰弱した身体に点滴を打ったかのようにスマホが蘇ります。パケ死者がメインターゲットなだけに、アプリ自体も軽く出来ているのでしょう。貧弱な通信速度にもかかわらず、サクサク購入手続きができるようになっています。まだデータの余裕があるうちに、いざという時のために入れておいて損はないアプリです(筆者はauユーザなので、デジラ以外のアプリの使い勝手は未検証です)。

(デジラアプリの画面。「ふやす」で追加購入します。
4タップで全ての手続きが完了するシンプルなつくり)

ちょっと本題とは外れますが、先ほど「ん、パケ死ってそんな意味だっけ?」と思った方、面白い記事があります。(IT Media News「パケ死の意味が変わった?高額請求ではなく…」)時代の流れとともに「パケ」での「死に方」も変化するんですね(笑)。

同じく「課金」も、本来の意味とは違う使い方をする人が最近増えてきました。(参考記事)たかがネットスラングですが、いつ市民権を得てビジネスの現場で使われるようにならないとも限りません。こちらも「油断は禁物」ですね。

…と、脱線したまま終わってしまいましたが、通訳者の「困った」がこれで尽きるはずもなく(笑)。次回の「後編」もお楽しみに??

平山敦子

Atsuko Hirayama

会議通訳者。得意分野は司法、軍事、IT、自動車など。元米国大統領、経済学者など著名人講演の同時通訳も多数。この仕事を目指したきっかけは大学在学中のアルバイト。スポーツイベントのバイリンガルスタッフとして働いていたが、ある日現役のプロ通訳者と同席、その仕事ぶりを目の当たりにし衝撃を受ける。

「私もこんな風になりたい!」とアルバイトに精を出す(?!)うちに、いつしかそれが仕事に。通訳界では知る人ぞ知るガジェットおたく。パフォーマンスを最大化してくれる優れモノの道具を求め日々研究中。