第16回|新年特別記念号☆全部見せます!!ヲタクの仕事道具(前編)

update:2018/02/06

2018年一発目の記事でございます!!

遅ればせながら、この場をお借りして、旧年中のご厚情に心から感謝申し上げます。皆様の日々のお仕事や生活に有益な情報をお届け出来るよう、今年も全力投球していきますので、よろしくお願い致します!!!

今回は、新年一発目「特別記念号」ということで、ちょっぴり趣向を変えて超スペシャル(?!)なテーマを三部作でお届けいたします(年明け発表のWord of the Yearは別の機会に改めて)。題して「全部見せます!!ヲタクの仕事道具」なんとヤケっぱちな企画…まさか最終回?!いえ、そんなはずはございません(冷汗)。

私が日々持ち歩いている道具の中には、色んな意味で記事にできないものも多々あります。ありふれた物や、世界中で私以外に誰も必要としていない物、あるいは、マニアックな改造を施し、とても皆様方にお薦めできないようなシロモノも…。こんな企画でもなければ、一生記事として取り上げることなどない物たちです。

今回は、それらも含めて「全て」ご紹介しようという次第。それによって何か見えてくるものがあるかもしれません。通訳という仕事に馴染みのない方には(少々偏っているかもしれませんが)その日常をイメージするきっかけとなれば幸いです。

現役通訳者の方々には日々のお仕事のご参考になれば、と言いたいことろですが、果たして参考になるかどうか(笑)。そこはあくまで「特別企画」ということで(実用性はさておき)まずは「読み物」として楽しんで頂けることを目指します。どうか気楽にご覧くださいませ。

仕事道具一式、まずは床に並べてみました。①~③はほぼ毎日持ち歩いていますが、それ以外は仕事の形態に応じて使ったり使わなかったりします。

①の中身はこちら。

ア)ケース(ブランド不明)

文具店で良く見かけるB5判のケースです。マジックテープは開閉のたびに「ベリベリッ」と音がするため、ファスナー式にこだわりました。他の通訳者とペアを組む時、雑音はご法度。集中力の妨げとなりますし、話し手の声がかき消されてしまう恐れもあるからです。

ショルダーストラップをつなげる金具も音がするので外してしまいました。ストラップは直接本体に内側からミシンで縫い付けています(不便を感じると、すぐこうしてカスタマイズしてしまいます)。立食パーティーや施設見学などの立ち仕事では、ストラップを出してショルダーバッグのように肩にかけ、貴重品を携行するのにも使います。

イ)電子メモパッド(Hallomall 12インチ電子メモ

ここ何年も愛用しています。「固いペン先(ニンテンドーDSタッチペンのような)で書き、ボタンを押して消す」という仕組み。書いては消し、書いては消し…それだけに特化したツールです。紙やインク切れの心配から解放されるし、荷物も少なくて済みます。私はもう紙のメモとペンには戻れません!同通はもちろん、逐次通訳でもフル活用しています。

昨年まで「ブギーボード」(この分野の草分け的な製品)を使っていましたが、ボタン部分が壊れて買い替えて、今はこれです。より薄く、画面が大きく(実寸232mmx169mm)、堅牢な作り。そして安い(笑)!!

聞くところによると、無印良品の「再生紙らくがき帳」(ノートテイキング用として通訳者の間で絶大な人気を誇る商品)の店頭での取扱いが減り、入手しにくくなっているとか。これを機に電子メモパッドもご検討してみては?!

ウ)ボールペン(ジェットストリーム プライム 多機能ペン3&1

「黒・赤・青のボールペンとシャープペンがついた4機能タイプ」ですが、黒のインクを外して、スタイラスの替芯に付け替えています。電子メモパッドには専用のスタイラスが付属していますが、持ちにくく長時間の使用に向いていないため、こちらを使っています。

電子メモパッドは感圧式なので、固いものなら(キャップを閉めた状態のボールペンや、それこそ爪でも何でも)文字は書けます。ただ、書くものを選ばないと、コツコツ音がして通訳に支障をきたしてしまいます。試行錯誤の末にたどりついた結論がこれでした。

逐次通訳で、メモパッドに書ききれないほど話の長い人がいたらどうしましょうか。その時はボールペンに切り替え、資料の裏や余白など「そこら辺の紙」に続きをメモします。意外と原始的ですね(笑)。でも、だからこそ「ボールペン+スタイラス替芯」なのです。この時、ペンはノック式でなく回転式であることが重要。ペンを握り直すことなく即座に切り替えられるからです。

赤と青のインクを残しているのは、資料や読み原稿に書き込みをする際にも目立つように。シャープペンシルのペン先は切替時に紛らわしいので外してあります。

エ)蛍光ペン(ぺんてる ノック式ハンディラインS

特にこだわりはありませんが、ノック式の一体型なのでコンパクト。カートリッジ交換できるのでコストパフォーマンス(以下「コスパ」)も良さそうです。

オ)A4コピー用紙

「そこら辺の紙」すら、ない時のために常に5~6枚持ち歩いています。

カ)予備の電池

電子メモパッドは電池切れが心配になりますが、意外と大丈夫。通常の使用で3~4カ月は持ちます(といっても、通訳者の「通常」は製造元の想定とかけ離れていると思いますが)。電池切れが近くなると「書けなくなる」のではなく「消え方が甘く」なるだけなので、業務に支障はありません。ボタンを2回押さないと消えなくなってきたら電池交換のサイン。

ちなみに、B5判ブギーボードは「単6」という珍しい電池を使っていました。一方、Hallomallは「CR2032」というありふれたコイン電池で、そこも嬉しいポイント。

電子メモパッドで心配なのは、電池切れよりも「消す」ボタンの故障かもしれません。なにせ、製造元の想定をはるかに超えて酷使しますからね…。これまた、突然壊れることは(多分)なく、効きが悪くなってきたら本体をまるごと買い換える感じです。使い方にもよりますが、2年くらいは持つと思います。

キ)ボールペンの替芯(JETSTREAM SXR-200-07

ボールペンは電子メモパッドに書ききれない時の予備なので、この替芯は「予備の予備」。よって、コスパはさほど気にしません。

ボールペン自体をメモ取りであまり使わないので、訳している真っ最中にインク切れ…なんてこともそうそう起きませんが、万が一そうなったら、青→赤、という具合に色を切り替えてその場を乗り切り、手が空いたときに替芯に交換することになると思います。

ボールペンといえば、ペン先から出過ぎたインクがいつまでも乾かず、手や衣服を汚してしまうのが嫌でたまりませんでした。とある法律事務所の立派な木製の会議机に染みをつけて平謝りしたことも。JETSTREAMは滑らかな書き味はもちろんのこと、速乾性に優れ、こうした「ダマ」も出来にくいので、ずっとこれ一択です。特にこのSXR-200シリーズの替芯は他社のボールペンにも使えることが多いので、カートリッジの寸法や外観が似ていれば試す価値アリかも。

iPad Pro (10.5インチ)

意外や意外…今一番活躍しているのは「手書き機能」による「単語帳」の作成です。購入時には、まさかこんなにアナログな用途に使うとは思っていませんでした。

通訳者は皆、案件ごとに専門用語やキーワードなど集めて「単語帳」を作っているかと思いますが、私にとって単語帳は「事前準備用」と「現場参照用」の2種類。iPadが威力を発揮するのは特に後者です。

「事前準備用」の単語帳は、現役通訳者ならおなじみの、資料やネットから用語を拾い出してエクセルなどの表にまとめたもの。単語を記憶したり、思考を整理したりするのが目的です。将来同じような分野の仕事をする時の参考にもなります。当然ながら、これを作る時はパソコンの方が効率的でしょうね。

一方「現場参照用」は、会議の参加者の名前や肩書、頻出語(会議名や製品名、企業理念、法令や省庁の名前、その他キーワード)などを、白い紙に書き出しておくだけ。これを通訳の最中、目の前に置いておくと、その言葉が出て来るたびにいちいちメモを取らなくて済むし、長い語句を暗記する必要もありません。

「事前準備用」で代用できそうですが、目的が違うので分けて考えたほうが効果的だと感じています。電話に例えれば、「事前準備用」が住所録やアドレス帳なら、「現場参照用」は頻繁にかける相手の番号を短縮ダイヤルに入れたり、付箋に書いて机の前に貼ったりするようなイメージですね。

通訳の最中、準備の時には出てこなかった重要な用語や情報に出会ったら、余白に適宜追加していきます。たいてい殴り書きですが(笑)。ただ、この「殴り書き会議メモ」の臨場感はあなどれません。何年経過していようとも、このメモを見返すと、その時の様子が鮮明に脳裏に蘇ってきます。その用語が出てきた状況まで脳内再生できる…これは綺麗に整理されたエクセルの単語リストには無い効果だと思います。

それは紙のメモでも同じですが、iPadで作って管理すれば、使い勝手が格段に上がります。タイトルや作成日で検索できるので、必要な情報をすぐに見つけられるし、紙の書類を保管するスペースも必要ありません。

お薦めのアプリはこちらです。

Notability
Ginger Labs

PDFやパワーポイント、画像などを取り込んで、その上から文字を書き込んだり、マーカーを引いたりできます。機能もシンプルかつパワフルで使いやすいです。私は使っていませんが、文字と連動した録音再生機能もあります。

Notabilityで作ったメモの例(※顧客の機密情報は含まれていません)

エクセルの単語リストとセットにしてクラウドに保存しておけば出先で参照出来るし、便利な時代になりました。私は暇さえあれば昔の手書きの単語帳をスマホカメラで撮ってEvernoteに保存しています。

冒頭に「アナログ」と申し上げましたが、iPad Proの魅力は正にそこにあるのではないでしょうか。使えば使うほど、手書きの世界と電子の世界の「良いとこ取り」をしつつ両者をつないでくれていると実感します。Google DriveのOCR機能(画像から文字を認識する機能)が巷で話題になっていますが、こうした技術のさらなる進化によって、今後その可能性は一層広がるのではないか、という予感がしています。

アップルペンシル

これなしのiPadなど、もはや想像できません!どんなに速くペン先を走らせても、遅延なく文字が書けます。逐次通訳のノートテイキングにも使おうと思えば余裕で使える反応速度です。間違えたら簡単に消せるし、文字列を枠で選択して移動したり、大きさを調節したり…と、加工も自由自在。

アップルペンシルのケースはこちらを使っています。カバンの中で迷子にならないよう、あえて大きめのケースを選びました。

ペンシルホルダー付きのiPadカバーもありますが、ペンシルと本体とは分けることに。ペンシルを使う時より使わない時(=iPadを単体で使う時)の起動スピードを重視した結果です。iPadのカバーは純正のSmart Coverです。カバーを開けるとスリープ状態から自動的に復帰し、すぐ使い始めることができます。

短時間の小さなミーティングを1人で通訳する時には、この3つとスマホだけ持って仕事に行きます。意外と身軽な印象でしょうか?!

というわけで「全部見せます!!ヲタクの仕事道具」次回の「中編」は「ガジェット天国」史上、最もヲタク感満載な記事になりそうな予感…。乞うご期待!!

平山敦子

Atsuko Hirayama

会議通訳者。得意分野は司法、軍事、IT、自動車など。元米国大統領、経済学者など著名人講演の同時通訳も多数。この仕事を目指したきっかけは大学在学中のアルバイト。スポーツイベントのバイリンガルスタッフとして働いていたが、ある日現役のプロ通訳者と同席、その仕事ぶりを目の当たりにし衝撃を受ける。

「私もこんな風になりたい!」とアルバイトに精を出す(?!)うちに、いつしかそれが仕事に。通訳界では知る人ぞ知るガジェットおたく。パフォーマンスを最大化してくれる優れモノの道具を求め日々研究中。