【第1回】社内通訳者のお仕事

一口に社内通訳といっても現場によって環境は様々だと思います。今回は現在勤めております飲料メーカーIT部門での社内通訳経験について、皆さんにお話しできればと思います。参考にしていただければ幸いです。

【基本情報】

外資系飲料メーカーIT部門の社内通訳

チームの通訳者3名

コーディネーター1名

完全在宅オンライン対応

契約形態: 派遣社員

【1日のスケジュール例】

 9:00-10:00  プロジェクトの日次会議(逐次)

11:00-12:00  社内チームの週次会議(同時)

12:00-13:00  ランチ休憩

14:00-15:30  重要案件の社内稟議会議(同時)

16:30-17:30  パートナー企業とのプロジェクト進捗確認(同時)

現在の就業先では1日3〜5件の会議があり、わりと息つく間もなく1日が経過します。逐次と同通では同通の方が少し多いですが、参加者の希望や会議体に合わせて対応しています。基本的にはコーディネーターが通訳者を会議にアサインしますが、コーディネーター不在時は通訳者が対応しています。逐次なら1時間までは1名体制、同時なら2名体制で10分または15分交代で通訳を行っています。

ちなみに以前の職場は1日の稼働時間が2〜3時間で会議が全くない日もあったので、就業先によりかなり違うなぁと感じています。個人的には以前は物足りなさを感じて転職したので、今は程よい稼働ペースで働いています。

【資料や準備方法】

パートナーとの会議などは事前に資料がもらえることが多いので(前日または当日)目を通し、社内の定例会議はほぼ資料がないためその場で対応しています。

事前準備としては、提供された資料をもとに、会議ごとに毎回ルーズリーフ1,2枚程度の単語帳を作り、重要そうな部分を自分の言葉でまとめています。会議の合間にこの作業を全て手書きで行い(個人的に手書きが好きなので)、準備した資料は会議ごとにファイルに保管して時間のあるときに単語帳をまとめ直したり、知識の確認・補填をしたりしています。

ググっても分からないことは社員さんに聞くと親切に教えてくださる方が多いので、業務の邪魔にならない程度に確認するようにしています。

【社内通訳になったきっかけ】

もともと学生時代に通訳者に憧れ、国際会議で通訳を行う会議通訳者を目指しています。まだ通訳者になって2年目なのでフリーランスとして働く前に力をつけるべく、まずは社内通訳者として働くことにしました。分野としては興味があるIT業界からスタートしました。自分の知らない専門用語が出てきてもカタカナが使える場合が多く、分からない内容でもググると勉強できることも多いので、スタートとしては良かったかなと思っています。

【この働き方の好きなところ】

現場によっては社内通訳者1名のみのところもありますが(以前の職場がそうでした)、今の就業先はチームで日々通訳の対応をしています。これによりお互いの通訳から学んだり、訳し方について相談したりと日常的に同業者と話せるのは参考になることも多く良いところだと思います。

また派遣先の社員さんも含め一定期間同じメンバーと働くことになるので、ある意味チームの一員として働くことができるのは楽しいなと感じます。大きなプロジェクトがうまくいったときは一緒に嬉しい気持ちになり、少しでも頼られる通訳者になれるよう頑張ろうという気持ちが湧いてきます。

あとは定期会議に入ったりIT関連の知識がついたりしてくることで、日々の積み重ねが分かりやすい形で成果に繋がるのも社内通訳ならではかと思います。

【現場での難しさ】

「通訳者で共有している単語リストを全社のナレッジとして共有したいので、指定のフォーマットにまとめ直してください」

「コーディネーターが休みなのでZoomのホスト対応をお願いします」

など様々な依頼を受けることもあります。この際どこまで引き受けるべきか判断が難しいと感じることがよくあります。

単語リストに関してはそれほど時間を要さず対応できる内容だったので対応しましたが、通訳仲間とは、本来の業務内容ではないし今後は受けるべきか迷うねという話になりました。またZoomホストの件は、どうしても対応できる人がいないということで一度引き受けましたが、自分が同時通訳を対応する会議のホストも兼任し大変バタバタしてしまいました。通訳パフォーマンスに支障が出るので、今後はできませんとお断りしました。

ただ契約上は「コーディネーター不在時の通訳コーディネーション業務」も業務に含まれているため、状況に応じてできることできないことを理解いただく必要があるように感じます。また通訳チームには業務委託の常駐の方もいるので、どこまで対応するかは契約違反が起きないよう気をつけつつ、できる限り柔軟に、そして通訳者同士でも足並みを揃えるよう努めています。

通訳者といえど、柔軟に対応しビジネスに付加価値を生み出せるような人材が求められているのは現場でひしひしと感じる一方、通訳者としてどのように対応すべきなのかまだ日々悩んでいます。結局はケースバイケースになる気がしますが、判断に困る場合はその都度エージェントに相談しながら対応しています。

 【おわりに】

今回は自身の社内通訳としての経験について執筆させていただきました。最後までお読みいただきありがとうございます。今回の内容が少しでもどなたかの参考になりましたら幸いです。


長田 奈七海 (おさだ ななみ)

大学を卒業後、社会人経験を積むため総合職の正社員として就職。その後オーストラリアのクイーンズランド大学へ留学。卒業後、ITコンサルタント企業にて社内通訳者として就業をし、現在は外資系飲料メーカーの社内通訳者として就業中。

インタビュー記事

https://www.hicareer.jp/inter/interview/22489.html

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