【JIF2024】ロビン・セットン「機械通訳は価値をもたらすのか?」
ロビン・セットン
会議通訳者 (1983年-2020年AIIC会員、フリーランスおよび専属通訳者)、研究者、トレーナー、翻訳者、作家。フランスおよびイギリスの二重国籍を有し、主に両言語間、ドイツ語、中国語の通訳者として活動。応用言語学の博士号(1997年)取得。1990年以降、ヨーロッパとアジア(パリ、ジュネーブ、上海、台北)の通訳学校および教育機関にて、トレーナーやコースデザイナーとして活躍。直近では、中国映画の字幕制作などを手掛ける。クロスリンガル・コミュニケーションにおける語用論、認知、文化の相互作用の研究を専門とし、主な著書には、1999年出版の同時通訳に関する単行本、2016年出版の「A Complete Course and Trainer’s Guide」(共著)がある。
機械通訳は価値をもたらすのか?
現在、最新のAIツールは、流暢でもっともらしいテキストを生成し、場合によっては有用な翻訳を生成することもできる。 しかし機械通訳(MI)には、人間のコミュニケーションにおける十分な明瞭さと忠実さが求められる。現時点で最新の機械通訳システムを、既存の課題を提示するサンプル発話でテストしたところ、語用論的能力や、自己モニタリング機能、文化的な橋渡しなど、実際の現場でプロの通訳に求められる重要な能力が欠けていることがわかっている。「深層学習(ディープラーニング」は、ニューラルネットワークのスピードと語彙の拡大を可能にするかもしれない。しかし、その「進化の飛躍」を示す確実な証拠がない限り、そのシステムの役割は(合成音声出力が改善されたとしても)、観光やインターネットで利用されているような、有益なコンテンツへのガイド提供に限定されるべきである。
本ウェビナーでは、MIが広く導入された場合に予想される影響(おそらくモノリンガルが好まれる)について考察し、同時に技術サポートとしての機械通訳が、どのような分野で役立ちうるのか、また、訓練された人間の通訳者に委ねられるべき異文化コミュニケーションは何なのか、顧客やコミュニケーターを教育する戦略についても取り上げてみたい。