【JITF2021】安達眞弓「レッド・ステイツをピンクに染めるお仕事-『クィア・アイ』ファブ5メンバー2名の半自伝を訳して」
安達眞弓
出版・実務翻訳者。幼少期から海外TVドラマに親しむ。海外赴任や留学の経験はないが、英語圏、フランス語圏の小説、TVドラマ、映画の海で溺れながら育つ。30代でフリーランスの実務翻訳者となり、40歳で日暮雅通氏に師事。以降、実務翻訳との2足のわらじを履きながら、海外ミュージシャンやセレブのメモワール(自伝)、ミステリの翻訳を手がける。単独訳書は13年で2桁に達した。自称“遅れてきた新人”、いや、遅れすぎたかもしれません。
主な訳書に『僕は僕のままで』、『どんなわたしも愛してる』、『死んだレモン』、『悪い夢さえ見なければ』、『ペインスケール』、『闇と静謐』、『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック(共訳)』、『ジミ・ヘンドリクスかく語りき』などがある。
レッド・ステイツをピンクに染めるお仕事-『クィア・アイ』ファブ5メンバー2名の半自伝を訳して
Netflixの超人気リアリティー番組『クィア・アイ』。番組の大ファンだった私のもとに、1通のメールが届きました。
「タン・フランスをご存じですか?」
知るも知らないも何も……同番組でファッションのアドバイスを担当する、パキスタン系イギリス人で――。そこから怒濤のメールのやり取りがはじまり、『クィア・アイ in Japan』の配信日までに出版できるよう、納期1か月で翻訳の初稿を上げるという一大ミッションがスタートしたのです。
タン・フランスが自らの半生をつづった『僕は僕のままで』が完成に近づいたある日、同じ番組でビューティーを担当するジョナサン・ヴァン・ネスのメモワール『Over the Top』の詳しい内容が報道されました。薬物依存症とセックス依存症でリハビリ施設に入り、HIV陽性の診断を受けたジョナサンは、25歳で「人生巻き返しのターンよ」と宣言し、自分を愛し、高めていく人生第2のフェーズに入ります。版元のご厚意により本作も翻訳(『どんなわたしも愛してる』)を担当しました。
今回は、この2冊の翻訳作業中、英語の表現や引用、キャラクターの訳し分けなどで、特に注意した点や気付き、反省などなどをお話ししたいと思います。