【JITF2021】武田珂代子「通訳の歴史と戦争ーその今日的意義」

武田珂代子

立教大学異文化コミュニケーション学部教授。会議・法務通訳者、翻訳者としての長年の経験にもとづき、通訳翻訳の歴史、教育、社会文化的側面の研究に取り組んでいる。2011年までモントレー国際大学(MIIS、現・ミドルベリー国際大学モントレー校)翻訳通訳大学院日本語科主任。米国時代に外務省、カナダ政府の通訳者養成、通訳資格試験に従事。元カリフォルニア州認定法廷通訳者。MIISで翻訳通訳修士号、ロビラ・イ・ビルジリ大学で翻通訳・異文化間研究博士号を取得。著書、論文、訳書はこちら。 

通訳の歴史と戦争ーその今日的意義

「通訳と戦争」――何だかピンとこない方が多いかもしれません。でも、会議通訳の歴史における二つの金字塔的出来事とされるパリ講和会議とニュルンベルク裁判はいずれも戦争が契機となったものでした。また、太平洋戦争中は、連合国で軍事諜報のための短期集中的な日本語学習が進み、大規模な翻訳通訳活動が展開されました。戦後、こうした翻訳者・通訳者たちが、日本研究の発展や翻訳を通した日本文学や文化の紹介に大きな貢献をしたことは知られています。現在起こっている戦争・紛争・平和維持活動に関わる通訳者の状況に注意を向ける研究者やジャーナリストも少なくありません。戦争という「極端な」状況だからこそあぶり出される通訳者の役割や倫理についての課題があります。本講演では、今年3月に刊行した拙著 Interpreters and War Crimes (通訳者と戦争犯罪)を基に、通訳者の守秘義務や「中立性」といった職務倫理について再考したいと思います。

日本通訳翻訳フォーラム2021