【JITF2021】三浦真弓「オペラの対訳・字幕・訳詞 ~「―分野・多言語対応」という翻訳キャリア~」

三浦真弓

米国ボストン在住のオペラ翻訳家。哲学専攻の学生時代よりクラシック声楽曲(オペラ・オペレッタ・歌曲)の日本語翻訳を始め、1998年渡米後も一貫して、日本の音楽団体・声楽家・愛好家のために「歌詞の対訳・字幕・訳詞」を提供する。英仏独伊露の5ヶ国語に対応。全幕作品および抜粋曲の訳詞は500曲を超え、各地でくり返し上演・放映される他、一部は『オペレッタアリア名曲集 ソプラノ/メゾソプラノ』所収。米国では舞台評の英語執筆のかたわら、オペラ翻訳史を研究中。

早稲田大学第一文学部哲学専修卒、都立大学大学院人文科学研究科哲学修士。JASRAC(日本音楽著作権協会)準会員。本山真弓名義でマイノリティ支援分野に特化した英日翻訳者でもある。Twitter: @mayumiura

オペラの対訳・字幕・訳詞 ~「―分野・多言語対応」という翻訳キャリア~

「オペラを知りたい」と思いながら、外国語の壁に阻まれている人が多いかもしれません。オペラは「音楽」として聴いても魅力あふれるものですが、イタリア語・ドイツ語・フランス語・ロシア語などで書かれた「歌詞」の内容を、いったん聴き手の母語で理解することで、今を生きる私たち自身の感情をより豊かに代弁する「歌の劇」となりえます。

オペラ翻訳家は、この「オペラを日本語で知る」過程を通じて、最終的に「オリジナル言語のままオペラを味わう」ためのお手伝いをします。オペラの作り手・演じ手・聴き手をできる限りシームレスにつなぐことで、時代や国を超えて価値ある劇場体験に貢献する、裏方の仕事です。

今回のセッションでは、オペラにおける三つの翻訳——「対訳」「字幕」「訳詞」——と、散文や映画やポピュラー音楽などの別ジャンルとは異なる、オペラ翻訳の特色についてお話しします。また、オペラという「一分野」に絞って「多言語」を翻訳する、というニッチな翻訳キャリアの一例を、私の学習歴やリソースをまじえながらご紹介したいと思います。

日本通訳翻訳フォーラム2021