【JITF2021】豊田憲子「機械には無理!だからこそ意識したい『論理的・批判的』思考」
豊田憲子
クリティカルライティング研究会HAL主宰。英日日英実務翻訳者。
大学卒業後、外資企業翻訳部に配属。その後フリーランスに。論文翻訳の依頼を受けたことをきっかけに医学とテクニカルライティングを学び、国際学会発表論文や事業報告書などの翻訳を手掛ける。翻訳だけでなく原稿草案企画にも携わる。後進指導として翻訳学校や企業内指導経験は多い。
業界内活動としては「IJET25」、「第29回JTF翻訳祭」に登壇発表、「翻訳事典」(アルク)で原稿執筆、「十人十色」参加など。
機械には無理!だからこそ意識したい「論理的・批判的」思考
翻訳者通訳者が10人集まれば10通りの訳し方があると言われています。翻訳通訳方法には公式があるわけではありません。さらに、翻訳者ひとりをとってみても分野や用途目的対象に応じて最適方法をそのつど考えていく必要があります。
この観点から見れば、機械言語処理エンジンや自動通訳機の品質が一定しないのは当然。機械には「筆者や話者がどのような意図でどのような道筋で書いているか話しているか」を判断できないからです。たとえると「テニスの壁打ち」のように表面的な置換しかできません。
現場を見てみると「テニスの壁打ち」文が少なからず散見されます。目にした耳にした文の存在意義は何か。この前までどんな話が展開し、この後どのように展開していくのかを分析または批判する力が必要です。この力をつけるには論理能力錬成が効果的です。さらに、その道筋が正しいかどうかをリテラシーも含め多角的に検討する力、つまり批判的能力も必要です。この2点を意識することでテニスの壁打ちではない力がつくでしょう。
当日は理論を簡単に説明した後、例文を紹介しながら「原文の道筋を効果的に読み・書き・話す」ポイント、さらに論理能力を培うための日常トレーニングをご紹介します。明快明晰な文章やスピーチを目指したいという皆様のご参加をお待ちいたします。