【JITF2021】矢野百合子「韓国語の通訳翻訳」
矢野百合子
学生時代に参加したワークキャンプでエネルギッシュな韓国に魅了され卒業後に語学留学。直後の大統領暗殺と軍事クーデター、民主化運動でキャンパスは催涙弾まみれに。その後も怒涛の政局に公私ともに翻弄されながら日韓を往復して語学や文化関連科目を教える。その間に通訳を頼まれたことが契機となり、帰国後の1994年から放送通訳と会議通訳に従事。
国際基督教大学博士課程満期退学。共著に『言葉のなかの日韓関係』(明石書店)、訳書に『運命-文在寅自伝』(岩波書店)等。元インタースクール韓国語通訳課程講師。
韓国語の通訳翻訳
日本と朝鮮半島との交流は卑弥呼の時代から存在しました。当然、そこには通訳者がいました。江戸時代には対馬藩が通訳者を養成し、薩摩藩にも朝鮮通詞が置かれる等、日韓通訳には非常に長い歴史があります。ところが、現代の日本で通訳エージェントが韓国語会議通訳者の登録を開始したのは、欧米言語より20年近く遅れた1980年代の半ばでした。なぜ、最も近い隣国で、経済交流も多い韓国語のプロ通訳者が長い間必要とされなかったのか。若者が韓流に魅せられ韓国文学の翻訳が増えている現在も韓国語の通訳講座が増えないのはなぜか。日韓通訳の歴史を簡単にご紹介するとともに、通訳スキルが何たるかも知らずに2足の草鞋で通訳業界に飛び込んだトンデモ通訳者の失敗談や経験を共有させていただき、通訳者とはどういう存在なのか、どんな通訳者が好まれるのか、自分はどうあるべきかを考えるきっかけにしていただければと思います。
日韓通訳は、文章構造が似ていて同じ漢字語も多いことから、一見すると、他言語に比べて容易に思われています。しかし、その一方で、その容易に思われる部分が、通訳翻訳者を混乱させ、足を引っ張っているとも言えます。日韓通訳での「誤訳とも誤訳でないとも言えない」事例や、リレー通訳時に知っておいて損はない日韓通訳の基礎知識などもご紹介したいと思います。