【最終回】通訳留学奮闘記~梨花女子大学校通訳翻訳大学院編~「卒業、できなかったーーーっ!!!」

34歳でハングル文字から韓国語学習をスタートさせ40歳を目前に韓国の通訳翻訳大学院(=通大)に入学した私が、「通訳のための海外留学」のリアルな実態をお届けします。

今回はいよいよ2年間の集大成、卒業試験の結果と今後の進路についてです。

結論から申し上げますと……

タイトルにもある通り、ずばり卒業試験は「不合格」という結果になりました。

正直言ってかなり落ち込みましたし、ショックが大きすぎてしばらくは勉強に身が入らず……(という口実で食べ正月に寝正月)。

「あなたが落ちるくらいだから、よほど難しい試験だったのね」などと優しい言葉をかけてくださる方もいらっしゃいます。

いえいえ、こればかりはハッキリさせておかなければならないのですが「毎年難しいんです。でもたくさんの先輩方が卒業されています」。すなわち、ひとえに私の実力不足だったのです。精進いたします……うぅ、悲しい。

ということで、まずはどのような試験だったのかを簡単に振り返りたいと思います。

前回ブログで、試験は同時通訳(韓日・日韓)と逐次通訳(韓日・日韓)の計4科目であるとお伝えしました。

試験問題の具体的な内容は公開されていないのですが、微かな記憶をもとに書き出してみますと、

– 同時(韓日)「米中の覇権争いと韓国半導体産業の未来」(易)

– 同時(日韓)「アメリカの共和党と民主党、それぞれの党内分極化と今後の政策の行方」(難)

– 逐次(韓日)「ディープフェイクによるなりすまし広告の被害と対策」(普通)

– 逐次(日韓)「日本企業の好業績と賃上げ」(普通)

……といった具合です。

このうち最も難しかったのは同期全員一致で同時(日韓)。私が不合格となったのもこの科目でした。

逐次は日韓・韓日いずれも人によって「難しかった」「易しかった」と意見が分かれています。各自の得意・不得意も影響しているのかもしれません。

最も易しかったのは同時(韓日)で、授業やスタディで扱った内容が素直にそのまま出題されたという印象です。

とはいえ、私はこの同時(韓日)すら落としていまして……おそらく気付かぬうちに何か重大なミスをしたのではないかと思われます(「米国」をずっと「中国」と言い間違えたとか。どこかで韓国語を話してしまったとか)。

卒業できなかったらどうなるの?

え、じゃあまた学校通わなきゃ行けないの? とよく聞かれるのですが、そういうことでもなく、とりあえずは「修了」扱いとなってお終いです。ただし修士の学位はもらえません。

「修了」を「卒業」とするためには、「2年以内に再試験に合格」という条件をクリアする必要があります。

再試験は年に2回行われていて、次の試験は6月20日。すでに新たな闘いがスタートしているのです。

なお、再試験のために払わなければならない登録料は約60万ウォン(!)。財政面での闘いでもあります。泣けます。

ところで通大の場合(他の一般大学院がどうなのかは知りませんが)、卒業だろうが修了だろうが、就職には大して影響がないといいます。「通大に入って2年間通った」ことに最大の意義がある、とも。

今回卒業試験には関わっていない教授からも、「(不合格だったからといって)今後のキャリアに何の支障もないから! また試験受ければいいだけだから。頑張れ!」と、実にあっさりした激励メッセージをいただきました。

確かに、もう一つの名門校・韓国外国語大の場合、1学年約20人のうちその年に卒業できる学生(全科目合格者)は1〜3人ほどだと言いますし、梨花女子大も今年は全科目合格者がたったの1人(9人中)……という結果になりました(胸を張って言えることではないのですが)。

それでも両校とも、先輩方は毎年どんどん就職していっているんですよね。

つまり、ここからは再試験に向けた勉強と並行して、就職活動にも取り組むこととなるわけです。

そう。私、韓国での就職を目指します。まだまだ韓国で暮らします。

通訳職は採用選考の内容もやはり通訳試験ですので(そして試験官が通大の教授だったりするので)、試験モードはまだしばらく続きそう……。もちろん卒業するにせよ就職するにせよ、通訳である限り自己研鑽の道に終わりはないのですが。

うーん、頑張らねば。引き続き、精進いたします!!

* * *

というわけで、2年間にわたってお届けしてきました「通訳留学奮闘記〜梨花女子大学校大学院編」はこの回をもって一区切りとなります。

6月の再試験に合格できたら、もしくは晴れて就職が叶ったら……。その頃に「通訳留学奮闘記〜その後〜」として再登場できる……かも、しれません。

なるべくめでたく明るいニュースをお届けできるよう、頑張りたいと思います。

2年間、拙い文章を読んでいただき本当にありがとうございました!

合否結果発表の画面。「합격(合格)」という表示のない空欄が「不合格」の意。切ない。

中村かおり

韓日通訳者を目指すライター。マスメディア業界での記者・編集者生活を経て独立後、2018年1月の初ソウル旅行をきっかけに34歳で韓国語学習をスタートさせる。2020年秋から半年間、韓国・ソウルでの語学研修に参加。2023年3月から梨花女子大学通訳翻訳大学院(修士課程・韓日通訳専攻)にて通訳専門訓練中。