【第5回】通訳留学奮闘記~梨花女子大学校通訳翻訳大学院編~「通大生の夏休み、そして新学期スタート!」

34歳でハングル文字から韓国語学習をスタートさせ40歳を目前に韓国の通訳翻訳大学院(=通大)に入学した私が、「通訳のための海外留学」のリアルな実態をお届けします。

今回は「通大生の夏休みの過ごし方」についてです。

あゝ“楽しい”夏休み

6月下旬の期末テストとレポート提出を終えてから8月末までの2か月余り、実に“楽しい”夏休みを過ごしました。カッコ付きの“楽しい”となったのは、「思う存分“楽しく勉強できる”夏休み」という意味だからです。

1学期の途中から教授陣には、

「この内容(※本1冊分)は夏休みにでも丸ごと覚えちゃって……」

「いまは学期中だからそんな暇はないでしょうけど、夏休みにでも……」

「夏休みの過ごし方で実力に大きな差が出てくるから」

「夏休みの……」

という具合に夏休み、夏休み、夏休み!と、夏休みの重要性を散々説かれてきました。

もし夏休みに十分勉強できなかったらどうなるのだろう――と不安に思っているところへ、一つ上の先輩からは「去年は2学期の初めに“夏休み中どんな勉強をしたか”を報告するレポートを書かされた」といった恐怖の情報提供まで。

しかも、「慌てて1を10に膨らませつつ報告したら、教授から“これだけ勉強したのにその程度なら……もっと勉強するべきだったのでは?”というフィードバックが返ってきた」という涙の結論つきでした。

夏休みにやろうとしたこと

というわけで連日の暑さのなか恐怖に震えながら組み立てた、ザ・画餅の計画が以下の通りです(同じものを教授にも提出しました。というか、提出させられました)。

休み期間中にやろうと決めていたのは、

・フォーマルな言い回し(国際会議やフォーラムなどでの司会進行のセリフ)の習得

・発音矯正

・数字の聞き取り能力強化

・ノートテーキングスキルの強化

・1学期の授業で扱ったテキスト復習

・読書

・日・韓それぞれの公的機関名を暗記

などです。

一人で黙々と勉強できるほど意志の強い人間ではないので、同期や他校の友人らと「スタディ(勉強会)」の予定を立てて一緒にやることにしました。

ちょっと……いや、だいぶ予定を詰め込みすぎたかもしれません。

実際、夏休みにやったこと

途中、諸事情により解消したスタディが3つありましたが、その他はほぼ計画通り。特別な予定がない限りは毎日スタディに参加しました。

 1.フォーマルな言い回しの習得

我が校のパク・ヘギョン教授が執筆された「日本語国際会議ノート」を使って、30のシチュエーションでのフォーマル表現(約130ページ分)を丸暗記しました。「日本語国際会議ノート」は簡単に言うと、司会進行や講演でのセリフ集を日本語と韓国語でそれぞれまとめたものです。

同期と一緒に毎日スタディの冒頭、あらかじめ決めておいた項目を片方が読み上げてもう片方が通訳して、それを互いにチェックして、翌日はその復習と新たな項目も合わせてチェック……という具合で覚えていき、30項目を2回転させました。

 2.発音矯正

これは以前からやっていたことでもあるのですが、シャドーイングと朗読練習を引き続き行いました。

シャドーイングは韓国の公共放送KBSの4〜5分くらいのニュース素材を使って、録音もせずに毎日一人でただ黙々と。

朗読練習は予めお手本音声をもらってモノマネをするように練習し、週2〜3回程度ネイティブに練習成果を披露してフィードバックをもらう、という流れです。

いま思えばシャドーイングも朗読も録音したものを確認して、自身の酷い有り様をもっときちんと自覚すべきでした(現在は2分くらいのニュースを録音・チェックしながら取り組んでいます)。

 3.数字の聞き取り能力強化

同期と互いに統計ニュースを持ち寄って、ノートテーキングしながら数字の聞き取りの精度を上げようと試みました。

本当は毎日でも取り組みたかったのですが、同期たちの反応がいまひとつだったため(という言い訳のもと)週1くらいのペースでゆったりと。

その結果……さして大きな変化があったとは言えず、今後の課題として残っています。数字の聞き取り、難しいです。

 4.ノートテーキングのスキル強化

こちらも毎日、同期とニュースを持ち寄って一方が読み上げ、もう一方がノートテーキングをして反対言語(韓国語は日本語に、日本語は韓国語に)へと訳出するスタイルで行いました。

多様なニュースに触れる良い機会にはなったのですが、お互い変に気を遣いすぎてしまい、読み上げのスピードが遅すぎた(=あまり良いトレーニングにならなかった)のではないかと反省しています。

ノートテーキングも引き続きの課題です。

 5.1学期授業内容の復習

逐次(韓→日、日→韓)、そしてST(サイトトランスレーション)の授業で扱ったテキスト40〜50種類ほどを、同期と一緒にそれぞれSTしながら互いにフィードバックを行いました。

当初はのんびり(ダラダラ?)と楽しくやっていたのですが、これではいけないと思い立ち途中から時間を測るように。最初に原文を朗読して、その時間に収めることを目標にスピーディにST……しようとしたものの、お恥ずかしながら全くダメでした。

A言語(母語)での訳出でもプラス5〜10秒、B言語(外国語)となるとプラス数十秒となるありさまで、1学期に教授から散々受けたフィードバック「遅い!もっとスピードを上げて」がいまさらながら身に染みる結果となりました。

ですが、時間を測るやり方はとても良かったです。

夏休みにできなかったこと

ここからは懺悔のコーナーです。

  • 読書

当初は夏休み中に長編小説やエッセイ集など最低5冊は読もうと意気込み、毎日のノルマも計画していたのですが……なぜか全く読めませんでした。辛うじて1冊を読み終えた程度です。

原因として思いつくものは「習慣化の失敗」でしょうか。スタディの合間に読もうと決めていたのですが、疲れてそのまま休憩モードに入ってしまい読書の習慣が身につかなかったのだろうと思います。

2学期が始まってからは「毎日必ず読書」「寝る前に1分でも必ず読む」を何とか死守しようと努力しています。

  • 日・韓それぞれの公的機関名を暗記

日本も韓国も行政など各種団体の名称は漢字の羅列であることが多く、全く知らないと聞き取りや訳出に支障が出てしまいます。そのため、夏休みのうちに代表的な組織名は全て覚えておこうと思っていたのですが……こちらも初めの頃に少し取り組んだだけで、ほとんど手付かずのまま終わってしまいました。

表などで一気に覚えるというよりは、ニュースなどで目にしたものをフラッシュカードなどにまとめてこまめにチェックするほかないのだろうか、などと考えているところです。どなたか良い方法があったら教えてください。

* * *

以上、夏休みの学習内容をざっくり振り返ってみました。

思う存分やったような気もすれば、もっとやれたのではないだろうかという気もして達成感というものはさほどなく。「夏休みの間に少しでも成長できたのだろうか(できていないのでは)」と不安を抱えたまま、9月からの2学期スタートとなりました。

自分の未熟さと向き合う日々はなかなか辛いものがありますが、引き続き頑張りたいと思います。

夏休み最終日、慌てて思い出作りに駆けつけたソウル近郊「テブ島」の夕日。
無加工でこの美しさです。


中村かおり

韓日通訳者を目指すライター。マスメディア業界での記者・編集者生活を経て独立後、2018年1月の初ソウル旅行をきっかけに34歳で韓国語学習をスタートさせる。2020年秋から半年間、韓国・ソウルでの語学研修に参加。2023年3月から梨花女子大学通訳翻訳大学院(修士課程・韓日通訳専攻)にて通訳専門訓練中。