【第10回】柴原早苗の通訳ライフハックス!「プレゼントの選び方」
フリーランスの通訳者というのは、ある意味「気楽さ」があると私はとらえています。大学卒業後の私は民間企業に勤めていましたが、その時に一番つらかったのが「朝のラッシュ」。私が当時暮らしていた実家はラッシュのひどさで悪名高く、早めの電車に乗っても、なかなか座れないという状況でした。さりとてガラ空きの始発に乗るほど早起きではありませんでしたので、必然的に毎朝押しつぶされながら出社していました。会社到着の時点で疲労困憊です。通訳者になってからは、業務時間もまちまちとなり、今やそうした満員電車に乗ることは稀となりました。
もう一つ「気楽」と思えるのが、人間関係です。同じ集団の中で、それこそ人事異動でも発令されない限り、長いこと固定メンバーで仕事をするというのが通常の業務形態でしょう。一方、フリー通訳者の場合、ご一緒するパートナー通訳者も毎回異なります。クライアントさんに至っては、「私とは価値観が合わない!」とどれほど思ったところで、単発の仕事であればせいぜい数日間だけです。そういう意味でもサバサバした気持ちで生きていくことができます(もっともその分、有休/慶弔休暇、住宅手当、株主優待等々の福利厚生もゼロなのですが)。
このような具合で「身体的・精神的な気楽さ」を感じられるフリーランスではありますが、その一方で、人間関係を良好に保つ工夫も大切です。メールには即座に返事をする、礼儀正しく振舞う、感謝するなどはその一例と言えるでしょう。さらにカギを握るのが、相手へのねぎらいです。そこで今回は「プレゼント」についてお伝えしていきます。お世話になっている方へどのようなギフトを選べば良いか、参考にしていただければ幸いです。
1.まずは先方の好みを最優先
プレゼントや差し入れ、手土産で一番大事なのは、相手の立場に立つことです。もしお相手の方の好みを知っているのであれば、それを持参すれば一番喜んでいただけます。「マカロンが好き」「どら焼きが好物」など、事前に把握していれば、そちらをプレゼントするのがベストです。
2.先方に手間をかけないように
どれほど評判の良いスイーツであれ、先方に手間をかけてしまうものは避けるように私はしています。たとえばホールケーキなどはカットする必要が出てきますよね。事務所にナイフやプレート、フォークなどがあるかどうかわかりませんので要注意です。同様に、冷蔵庫が無い場合もありますので、冷蔵品も控えています。
3. 個別包装で気楽に食べられるものを
たとえば事務所などを訪問するのであれば、個別包装されたスイーツで個数が多いものを選びます。少な目で人数不足になるよりも、一つあたりの大きさは小さくても良いので、数を優先します。個包装のチョコなども良いのですが、夏場は要注意。
4.自分の荷物量も考える
もしその日、自分自身の荷物が多いのであれば、それも考えた上で持参品を選びます。訪問の直前に買えればベストなのですが、数日前に購入の場合、自分の荷物プラス紙袋入りお土産品というのはなかなか大変です(ラッシュ時の乗車となればなおさら!)。私が選ぶポイントは、タテヨコ向きを変えても影響が出ず、なるべく薄型のボックス入りです。
5.事前に自分で頂いてみる
お土産を持参する際、できればあらかじめ自分でも購入して頂いてみることをお勧めします。自分が食べてみて美味しいというものであれば、それにまつわるちょっとした会話につながるからです。書籍やネット上の評価ももちろん参考になりますが、私としては自分がおいしいと思えるものを買うようにしています。
6.マイ購入先を複数持っておく
最近私は近畿地方のとあるスイーツメーカーの経営者の本を読み、非常に感銘を受けました。都内にも出店していることを知り、早速そのお店で購入したところ、これまた美味!以来、私はこのお店を応援しようと思うようになりました。こうしたお店をいくつか持っておくと迷わずに購入できます。私にとっては時短です。
7. お花のこと
最後にお花について少々。これは訪問先への手土産というより、むしろ「講演会の主催者がゲストスピーカーにプレゼントする」という位置づけの方が多いかもしれません。私自身、出張先でレクチャーをした際、お花を頂くことが何度かありました。中でも嬉しかったのが、小さなブーケタイプのお花です。大きさとしては、スイーツ用の紙袋に入るぐらいのものです。手渡しの際にはブーケだけでしたが、その後、持ち帰り用の紙袋もいただけたので、移動時に助かりました。
一方、同じお花でも、できれば避けた方が良いのが「大きな花束」です。確かに舞台上で大きな花束をプレゼントするのは、聴衆にしてみればインパクトがあります。けれども、遠方からのスピーカーにとっては、それを自宅まで持ち帰るのもなかなか大変です。さらに「持ち帰り用の袋が無い」となれば、それこそ「お姫様抱っこ状態」で遠路持って帰ることになりかねません。夕方のラッシュであれば、他の乗客の迷惑になるでしょうし、大きな花束の場合、香りの問題もあります。さらに帰宅後に花瓶が無いなどということも。ですので、気持ちはありがたくいただきつつも、お花を贈るのであれば小ぶりのものをお勧めします。
以上、今回は「プレゼント」についてのライフハックをお伝えしました。ギフトというのは贈る方も贈られる方もワクワクしますよね。みなさんならではのベストなプレゼントが選べますように!
柴原早苗(しばはら さなえ)
放送通訳者。獨協大学非常勤講師。上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。ロンドンのBBCワールド勤務を経て現在はCNNj、CBSイブニングニュースなどで放送通訳業に従事。NHK「ニュースで英会話」ウェブサイトの日本語訳・解説を担当。ESAC(イーザック)英語学習アドバイザー資格制度マスター・アドバイザー。通訳学校にて後進の指導にあたるほか、大学での英語学習アドバイザー経験も豊富。著書に「通訳の仕事 始め方・稼ぎ方」(イカロス出版、2010年:共著)、「英検分野別ターゲット英検1級英作文問題」(旺文社、2014年:共著)。