【第18回】柴原早苗の通訳ライフハックス!「ホテル活用術」
この2年間、会議通訳もセミナーも授業もオンラインが主流となり、「交通機関を使って移動をして、現地に宿泊する」という機会がめっきり減りました。確かに、「自宅にいながらにして通訳や指導をできる」のは便利です。合間に家事をしたり宅配便を受け取ったりできますし、ラッシュの電車にもまれることもありません。でも、出張や旅というのは、現実から離れることができます。普段見慣れない光景を目にするだけでも新鮮な気持ちになれますし、ホテルを「自宅やオフィスとは異なる空間」として活用すれば、むしろ作業効率アップにつながりますよね。
そこで今回は、ホテルの使い方についてご紹介していきます。
1. 目的に応じて宿泊先を決める
ビジネスなのか休暇なのかでホテルを使い分けるのもおススメです。前者であれば、室内のデスクやチェア、WIFI環境など、仕事をしやすい仕様になっていれば作業もはかどります。コロナが始まったころ、どうしても自宅で効率が上がらなかった私は、某ビジネスホテルのテレワークプランを使いました。テーブルが広くて資料を広げることもでき、ケトルやコーヒーなどのサービスも充実。自宅と異なり、視界に入って来る「雑音」がないため、大いに集中できました。
2.自分へのご褒美として活用する
自分自身へのとびっきりのご褒美として、少し贅沢なホテルに泊まるのもありだと私は思います。特にこの2年間は旅行もままならず、何かと窮屈で不安な日々が続きました。ですので、感染症対策を徹底した上で、ホテルに出かけることができれば、気持ちも明るくなります。ホテルを拠点に観光するのも楽しいですが、ラグジュアリーなホテル滞在そのものを目的とする旅も、リラックス効果があります。ホテルマンやベルボーイ、スタッフの方々による最高級のサービスを受ければ、心身ともに元気になれます。
3. チェックインから快適なステイは始まる
ホテル滞在はチェックインから始まると私は考えます。カウンターでは背筋を伸ばし、大人のふるまいがスマートにできれば、気持ちよい応対が受けられるはず。礼儀正しさや言葉遣いなどに気を配りながら、エレガントにチェックインしたいと思っています。
4.部屋に入ってまずやること
ルームキーを受け取り、いざ部屋へ。まず荷解きで私が心がけているのが、「日常の動線と同じようにすること」です。持参した着替えやコスメ、洗面グッズなどは自宅と同じように配置。一方、デスクの上も自室の書斎と同じように手帳やノート、タイマーや電子辞書などを置きます。こうすることであっという間に自宅と同じような動線を確保できます。リラックスするのはこの作業を一通り終えてからです。
5.チェックアウトの前に
非日常の空間を味わい、いざホテルを後にする際に意識していることがあります。それは「部屋を自宅と同じようにとらえること」。具体的にはバスルームやデスク周り、ベッドなどを自分の家と思って整えてから出発することです。「客室係の人がやってくれるから」と思うのではなく行動することがポイント。タオルは使用済みと未使用がわかるように仕訳ける、浴槽やフロアが汚れていないか確認する、カップの飲み残しは捨てる、ベッドメイクをするといった具合です。海外と異なり、日本にはチップ制が無いからこそ、「立つ鳥跡を濁さず」で出発したいと私は考えます。
6.アンケートには建設的な意見を
最近は紙版だけでなく、QRコードを読み取って即時に意見を書けるアンケートも普及しています。私は滞在中に気づいたこと、とりわけ「嬉しかったサービス」についてはお世話になったスタッフ名を書いたり、お名前が分からない際には具体的なエピソードを記したりして総支配人にお伝えできるようにしています。一方、「こうして欲しいな」と思うことは、建設的な文言で書くよう心掛けています。たとえば以前利用したビジネスホテルの朝食会場。トースターがあるのですが、いわゆる家庭用のトースターでした。「トーストを焼くのに3分間利用」となり、行列になってしまっていたのです。そこで提案したのが「海外にあるようなコンベア型トースター」。これなら高温でどんどん回転していくので、待たずに済みます。そうしたアイデアをお伝えすることが、ひいてはそのホテルの改善につながると思っています。
以上、今月はホテル活用法についてご紹介しました。最後に、「各ホテルに対してリクエストしたいことナンバーワン」を。それは「ゴミ箱の大きさ」です。どのお部屋も小さめのゴミ箱で、あっという間にあふれてしまうのです。ホテルによっては分別用に複数設置されている所もあるのですが、いずれにせよどこも小さめ。もう少し大きいと助かるなあと思います。
柴原早苗(しばはら さなえ)
放送通訳者、獨協大学非常勤講師。上智大学卒業。ロンドン大学LSEにて修士号取得。英国BBCワールド勤務を経て現在は国際会議同時通訳およびCNNや民放各局で放送通訳業に従事。2020年米大統領選では大統領・副大統領討論会、バイデン/ハリス氏勝利宣言、大統領就任式などの同時通訳を務めた。NHK「ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説担当を経て、現在は法人研修や各種コラムも担当。「放送通訳者・柴原早苗のnote」(https://note.com/sanaeinterpreter/) も日々更新中。