【第7回】柴原早苗の通訳ライフハックス!「疲労回復法」

通訳の仕事というのは何かと疲れがたまりますよね。特に私の場合、一番最初に疲労感を覚えるのが首、肩、背中です。発声しながら知らず知らずに力が入っており、ガチガチになってしまうのでしょう。ヘアサロンのマッサージではいつも「鉄板みたいですね」と言われてしまいます。今回の「ライフハック」では8つの疲労回復法をご紹介いたします。

1.水を一日1リットル以上は飲む

用意するのは空の1リットルPETボトル。私は冷たい水が苦手なため、夜のうちに水道水を汲み、机の上にコップとともに置いて常温にしておきます。朝起きたらまずは1杯飲みます。これだけで体が目覚めるような気分になれます。あとはなるべく午前中のうちに1リットル飲み終えるようにすればOKというのが私なりのスタンスです。ちなみに外出時も必ず500ミリリットルのPETボトルを持ち歩き、こまめに水を飲むようにしています。体の中からキレイにすることも疲労回復につながります。

2.意識的に体を動かす

たとえ業務中であっても、通訳の合間に肩や首を回すことが大事です。また、ツボを押すだけでも大いに効果があります。業務の合間には必ず立ち上がって歩き回る、あるいは座ったまま足上げをするなどの筋トレも血流が良くなり、頭もスッキリします。

3.とにかく歩く

私の場合、スポーツクラブのスタジオレッスンも好きなのですが、日ごろから歩数計を着用しており、なるべく沢山歩くようにしています。エレベーターやエスカレーターではなく階段を使う、一駅分歩くなどするだけでも歩数は稼げます。出張先では業務の合間を縫ってガンガン歩くことも多いですね。また、滞在中、朝食は朝一番で済ませ、チェックアウトまでの10分間でも良いのでホテルの周りを歩いてみます。早朝は空気もひんやりしておりさわやかです。

4.マッサージや鍼なども効果的

月1回、行きつけの鍼灸院に行っています。出かけるのはたいてい月末です。一か月間頑張った自分へのご褒美という位置づけです。施術後、そのまま翌月の予約もとることで、「よし、来月も頑張ろう!」と思えてきます。また、同じ鍼灸院で診てもらうことで、自分の体調を定期的に把握していただけるのがありがたいところです。一方、出張の際にはホテル近くのマッサージ店をチェックし、業務後に行けるよう、自宅を出発する前に予約をとっておくこともあります。

5.自腹でもグリーン車

出張の際、どうしても疲労を回復させたいときはあえてグリーン車に乗ります。もちろん自腹です。決してお手頃価格ではありません。けれども最近の新幹線は通勤電車並みに人が多いこともあり、私の場合なかなか気が休まらないのですね。「グリーンに乗ったら今日の通訳報酬が・・・」などとあえて考えず、私は「自己投資」と割り切っています。新幹線のグリーン車はカーペット敷きで静けさがあり、人も少なく落ち着けます。そこで仕事をしたり読書をしたりする一方、ボーっとしたり睡眠を補ったりするなど、「積極的な疲労回復」に努めています。

6.アーリー・チェックイン

こちらも自腹の話題です。たとえば出張で早く目的地に着いてしまった場合、午後までホテルの部屋に入れないことがあります。そのような場合、カフェで時間をやり過ごすこともできるでしょう。あるいはあえて近場のマッサージ店に予約を入れておき、長めの施術を受けるのも一案です。私の場合、法外な金額でなければ、やはり自腹でアーリー・チェックインをしています。「とにかく早く部屋に着きたい、荷解きをしたい」という場合、早めに部屋に入れるだけでもストレスは激減します。

7.時間配分を決めておく

仕事の準備や家事、育児など、一日24時間あってもなかなかすべてを完了することは難しいですよね。私は一日を大まかに分けて、その時間帯と自分の体調に合った作業をおこなうようにしています。たとえば「考える作業」「集中力を要する仕事準備」などはすべて午前中におこないます。家族は仕事や学校に出払っているため、一人で集中するには最適な環境です。くたびれたら数分間席を立ち、夕食の材料を切ったり、少しだけ家事をしたりして戻ります。午後はさほど頭を使わない作業に充て、ジムもなるべくこの時間帯に行くようにしています。夕方以降は頭よりも手を使う作業を意識しており、たとえばレシートのPC入力(確定申告に必要)やたまった新聞・雑誌の読み倒しもこの時間帯におこないます。夜はストレッチやセルフマッサージ、ボーっとテレビを見る、頭を使わない読書をするなどといったことを心がけています。

8.ストレスや疲労の元になるものを取り除く

たとえば私の場合、ここ数年間、体調管理という観点から朝晩に体重を測り、記録していました。また、食事日記もこまめに付けており、食べたものをメモに書いていたのです。ところが最近になり、どうもその一連の作業が自分の心の負担になっているのではと思い始めたのですね。「実はこうした記録作業がストレスや疲労の元なのでは?」と考えたのです。そこでいっそのことやめてしまおうと思い至りました。そして一切の記録作業をしなくなったところ、気持ちも晴れ晴れしました。因果関係は不明ですが、熟睡できるようになり、体調も良好となったのです。潜在的・無意識なストレスも積もり積もれば大きくなってしまうのだと痛感しました。

いかがでしたか?今回は8つのポイントをご紹介しました。
何か一つでも取り入れて頂けるようであれば嬉しいです。


柴原早苗(しばはら さなえ)

放送通訳者。獨協大学非常勤講師。上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。ロンドンのBBCワールド勤務を経て現在はCNNj、CBSイブニングニュースなどで放送通訳業に従事。NHK「ニュースで英会話」ウェブサイトの日本語訳・解説を担当。ESAC(イーザック)英語学習アドバイザー資格制度マスター・アドバイザー。通訳学校にて後進の指導にあたるほか、大学での英語学習アドバイザー経験も豊富。著書に「通訳の仕事 始め方・稼ぎ方」(イカロス出版、2010年:共著)、「英検分野別ターゲット英検1級英作文問題」(旺文社、2014年:共著)。

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