【第8回】通訳・翻訳学習記-ミドルベリー国際大学院「現場での力が試される、MIISの2学年目」

皆さん、こんにちは!丹羽つくもです。昨年から数回にかけて、母校ミドルベリー国際大学院(MIIS)についての連載をニック・コンチーさんと執筆しています。前回はついに2年生となった私たちの1学期目の様子を、ニックさんがまとめてくださいました。今回は、その続きということで、日英・英日の通訳・翻訳クラスだけではなく、他にもどんなキャンパスライフを送っているのかについてお話させていただきます!

プラクティカム(Practicum)での実践練習

まず最初にご紹介するのは、Practicumです。MIISで会議通訳(Conference Interpreting)を専攻している2年生は、通訳プラクティカムが必修となっています。このクラスでは、MIISの内外で行われるイベントで実際に通訳をしたり、多言語でリレー通訳の実践を行ったりと、日本語<>英語の通訳クラスではなかなかできない経験を積むことができます。

最新のSimul Lab 4で開かれたMultilingual Practice (MLP)の様子。周りには個人用ブースがびっしり。臨場感あふれる現場でした。

その中でも印象に残っているのが、Multilingual Practice (MLP)と呼ばれる、参加者の発言を多言語でリレーをしながら行う、国際会議を想定したアクティビティです。2020年に、改修された同時通訳用のラボ(Simul Lab)がオープンしたのですが、コロナ禍でクラスがオンラインに移行したため、昨年度はなかなか使うことができませんでした。そして、2021年の秋学期になって、やっと私たちが使えるようになったのです。そのラボの最新鋭の同時通訳機器を使い、リモートの学生も参加できるようにZoom会議もつなぎ、ハイブリッド方式で会議を行いました。日本語を始め、韓国語、中国語、ロシア語、スペイン語、フランス語、ドイツ語と、MIISで履修できる全言語が参加しました。最初は実際の機材でリレーをする方法に慣れなかったり、マイクのON/OFFを忘れてしまったり、リレー通訳の言ったことが理解できなかったりと、トラブルがたくさんありましたが、その後にデブリーフィングを行い、通訳者として、発言者として何を改善すべきかなどを話し合いました。通訳としても、自分の訳出で発言者の印象ががらりと変わってしまう様子を体感し、気が引き締まりました。

講堂のブースから見た景色。多言語のパネリストが人権について話し合うイベントでの通訳。お互い同じ空間にいるということが不思議でした。

授業外のイベントとしては、英語教育や環境学など、他の学部が招いたゲストスピーカーの通訳に入ることがよくありました。核不拡散・軍縮、国際貿易、多文化理解など、MIISには通訳・翻訳以外に様々な学部があり、その学生や先生方と交流できるのもモントレーの醍醐味だと思います。こちらでも、オンラインのイベントだけではなく、実際に講堂のブースを使うこともできるようになったので、対面授業ができる感謝を覚えました。

キャリアとしての通訳・翻訳

2年生の2学期になると、卒業後の仕事探しへのサポート色がますます強くなります。1学期目からキャリア相談科(Center for Advising and Career Services)のアドバイザーの力強い支援を受けるのですが、最終学期になると、通訳翻訳の教授が自ら教えるキャリアへの姿勢についての講義も必須になります。ここでは、見積書の書き方、仕事を引き受ける際の考慮事項などの内容から、通訳の倫理、卒業生をゲストスピーカーとして呼んだレクチャーまで、様々なことをカバーしています。2年生の通訳・翻訳専攻全員の必修科目なので、1年生のオリエンテーションの時から顔を合わせていなかった同級生などから話を聞いたり、仕事探しのアドバイス交換をしたりと、何かと役立つクラスです。

また、キャリアフェアも毎学期行われています。特に毎年3月ごろに行われるキャリアフェアは、数十社の集まる大規模なものです。コロナ禍の影響で、今まで会議場を借りて行われていたキャリアフェアは、Handshakeというウェブサイトを使ったオンライン形式に移行しました。事前に説明会(30分)または面接(10分)のスロットに登録をし、企業ごとに違うリンクをクリックして「訪問」する形です。やはり対面で様々な企業に好印象をもってもらいたい、とは思いますが、オンライン開催で旅費などがかからなかったために参加できたとおっしゃっていた企業もあり、一長一短です。

メンターシップ制度

2年生になって、もう一つ大きく変わったことがありました。それは、後輩ができたということ。つい昨年自分もドキドキしながら歓迎会に参加していた身だったのですが、今ではもう「尊敬される」先輩になっていました。MIISでは学生主導のメンターシップ制度があり、1年生と2年生、または2年生と卒業生がペアとしてアサインされ、1ヶ月に1回程度会って話をする、という活動があります。メンタリングをされる方(後輩)が、言語ペア、専攻(通訳・翻訳・ローカリゼーション等)、地域(北米各地域、他国など)の希望を出し、担当のクラブがマッチングを行います。私の場合、最近卒業した韓国語の通訳の先輩がメンターとなってくれました。そして、日本語の1年生2人のメンターも務めさせていただきました。MIISのネットワークは「MIIS Mafia」と呼ばれるほど強いものです。これからも、ぜひここで培った人脈に頼りながら通訳・翻訳の旅を続けていきたいと思っています。

私たちの学年は、コロナ禍の完全リモート授業と、ハイブリッド授業の両方を経験しているユニークな学年だと思います。先日発表された内容によると、MIISの通訳翻訳プログラムは、2022年度からフルリモートでの履修が可能になります。これからも、授業形態のハイブリッド化が進んで、ますます多様な学生が勉強できる場になれば良いな、と考えています。

今回は、MIISでの2年生の様子を、日本語学科以外の面からご紹介してみましたが、いかがでしたか?次回は、遂に卒業間近!卒業試験について、ニックさんがレポートしてくれます。最後までどうぞよろしくお願いします。


丹羽 つくも Tsukumo Niwa

2020年より米ミドルベリー国際大学院モントレー校(MIIS)在籍。10歳から海外子女として育ち、現在は米国在住。自動車部品メーカーにて社内通訳として3年間勤務した後、会議通訳者を目指してMIISへ進学。第3回 JACI 同時通訳グランプリの学生部門でグランプリを受賞。

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