【第9回】通訳・翻訳学習記-ミドルベリー国際大学院「期末最終試験について」

卒業を決める最終試験

皆さん、こんにちは。ニック・コンチーです。私からの記事は今回で最後となりますが、今までの連載シリーズをお読みいただきまして誠にありがとうございます。ミドルベリー国際大学院(MIIS)で学ぶ内容・通訳方法などを皆さんにご紹介することができ、嬉しく思います。今回はMIISのファイナル試験と任意の修士論文について書いていきたいと思います。

無事に卒業できました!白い「フード」が修士学位の取得を意味します。
MIISでは、一年生が卒業式の通訳を務めてくれる伝統があります。新二年生、お疲れ様でした!

翻訳・通訳の最終試験

MIISの翻訳通訳プログラムでは、授業の成績が基本的に期末試験で決まります。1学年から2学年に進級するために、1年目は春学期の期末試験に合格する必要があり、同じく卒業するためには2年目の春学期の最終試験に合格しなければなりません。万が一最終試験を合格するに至らなかった場合、再試験をすることになります(やはり修士学取得を決める試験なので、1回限りの受験は難易度の高いMIISにしても厳しすぎます!)

試験の内容はあまり詳しく話してはいけないのですが、2年目の通訳授業は外交や国際政治が主な内容になるので、YouTubeで政治家のスピーチや専門家の講演などを調べ、日々通訳の練習をしていました。クラスメイトとの練習会は週に2-3回企画して行い、自主練習も毎日していました。2年目の翻訳授業の内容は幅が広く、医療から経済まで様々な内容を翻訳します。試験の準備として主に、それまでの宿題を振り返り、難しかった内容のものや重要単語などを復習するようにしていました。

必死に勉強していれば、当然疲れてもうパソコンの前に座りたくない!と思う時もあります。そんな時は、ソファーでのんびりして映画を観る。。のですが、「妥協」として邦画を観ることにしていました。私の大好きな時代劇映画の日本語は、通訳の授業で練習する内容とはだいぶ違いますが、通訳のスキルアップには意外と価値があると思います。昔の日本語を理解するためには聴解力が求められますし、日本の文化・歴史・そして豊かな表現を勉強することができるからです。このようにインプットを増やし、専門家の講演だけではなく、様々な日本語を常に耳にしていることが大事だなと実感しました。

卒業に近いこの時期、試験勉強と就職活動を同時にする学生が多くいますが、あまりにも忙し過ぎて、最終的に両立ができなくなる恐れがあるため、まずは最終試験に集中し卒業してから就職を考えるという学生も少なくはありません。幸いなことに、私は卒業後の就職先が4月の頭に決まったので、最終試験の準備に集中することができました。

試験の準備

通訳のパフォーマンスは基本的に精神状態で決まるので、最終試験の前日は練習することよりよく食べること、そしてよく寝ることが最も重要だと思います。冗談に聞こえるかもしれませんが、試験の前夜は、腹をくくって勉強をやめ、美味しいものを食べながらアニメでも観てからしっかり睡眠を取ることをおすすめします。

試験当日、逐次・同時通訳試験は、対面もしくはZoomのどちらかで行われました。

逐次の試験は、時間枠が決められマンツーマンで行われます。先生が動画を数分流し、学生はその間メモを取ります。これを「1セグメント」とし、試験は3セグメントあります。逐次通訳をする時は、単語リストや電子辞書が不可欠なので、教室に入る前にこれをノートパソコンとスマホで用意しました。

同時通訳の試験はたったの15分間です。そのため、途中でウォーミングアップをする余裕はありません。私は同時通訳をする際、エンジンがかかるまで少し時間が必要なので、勢いを増したところで本番に入るために、試験が始まる20分前から同時通訳の自主練習をするようにして試験に挑みました。

通訳試験と異なり、翻訳試験は全てZoomで行われました。流れを言うと、まず先生は試験で翻訳する原文を学生たちに送り、約1時間半後に学生たちが翻訳したファイルをメールまたはCanvasというサイト上で提出します。

コロナ禍ならではの「家を出ずにパジャマを着たまま受ける」Zoomでの試験は、ストレスレベルも低く感じ、気持ちもやや楽に試験を受けることができました。一方、「ブースで本番同様に受ける」対面の試験は、マインドセットを切り替えることができ、程よい緊張感を持ち、試験に臨むことができました。

任意の修士論文

 MIISでは、卒業するためには修士論文を書く必要はありませんが、翻訳プロセスの方略やゴール設定、プロジェクト管理能力、編集能力、独自で研究を行う能力など、様々なスキルを向上させるための良い機会なので、卒論を書く学生もいます。修士論文は、研究論文、翻訳論文、用語集論文という3 つの選択肢があり、卒業後に書き終えることもできます。

私は一年生終了時に、JETプログラムの時に住んでいた高知県の歴史に関する何らかの著作を翻訳論文として書きたいなと思っていました。翻訳論文を書く場合は、原文を翻訳させてもらうために著者および出版社から許可を得るなどのプロセスが必要で、夏休みぐらいから準備を始めなければなりませんでした。しかし、夏休みが始まると、ダイキンの通訳インターンシップに加えてオリンピックの通訳に参加させて頂くなどの「通訳の実務にあふれる夏休み」になったため、これはMIISの2年目は通訳の方に集中するべきだという兆しと捉え、結局翻訳論文を書かずに卒業することになりました。

夏になってくると、モントレーのアシカもビーチを楽しむために集まります。

以上、入学から卒業まで、MIISの翻訳通訳プログラムをご紹介させていただきましたが、いかがでしたか。お役に立てれば嬉しく思います。質問のある方は、メールまたはLinkedInでいつでも遠慮なくお声掛けください。

次回はつくもさんの最後の連載で、これからのキャリアについて書いてくれるので、お楽しみに!


ニコラス・コンチー Nicholas Kontje

ミドルベリー国際大学院モントレー校在学中(2022年5月に卒業する予定)。専攻は日本語の翻訳・通訳。入校前、国際交流員としてJETプログラムに2年間参加し、帰国後は旅行業界で勤務。副業でフリーランス翻訳・通訳として活動する。

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