【第10回】通訳者・関根マイクの業界サバイバル・ガイド「ビジネスオーナーとして考える その1」
(執筆・関根マイク)
私がまだ沖縄で通訳をしていた頃、ある国際会議で人手が足りず、九州から2人の同時通訳者が派遣されたことがありました。会議が始まる1時間前に現場入りして、すぐに講演者との打ち合わせが始まったのですが、それが一段落したあと、講演者が記念に担当通訳者の私と一緒に写真を撮りたいと言って、近くで資料を読んでいる九州の通訳者Aさんに「写真をお願いできますか?」と聞きました。通訳者Aさんは、「お断りします。それは私の仕事ではないので」と答えました。意外な答えに言葉を失ったことを覚えています。
確かに写真撮影は通訳者の仕事ではありません。ただ、これは作業にしてたった20秒~30秒ほどです。顧客に気持ちよく仕事をしてもらうことがイベント全体としての成功度を高めることにつながると、なぜ考えられないのか? 私は実務者であると同時に、通訳者を雇う立場の人間でもありますが、このようにビジネス全体のことを考えていない通訳者はどんなに上手くても雇いたくないと思いますし、エージェントもだいたい同じことを考えています。