【第3回】「ライラックの花香るころ―中国語を生涯の友として」 国民学校の頃 ほどなくわが家は新京の南湖に近い盛京大路の官舎に移り、1941年4月わたしは春光国民学校に入学する。明治以来慣れ親しんだ「小学校」という名称が戦時体制に対応して「国民学校」と呼ばれるようになった年である。 それでも入学式の日、わたしは新京のデパート三(み)中井(なかい)か宝山(ほうざん)で買い求めたピンク地に黒い格子模様のワンピース、靴は皮靴といったヨーロッパ風のハイカ...
【第2回】「ライラックの花香るころ―中国語を生涯の友として」 第一章 「五族協和」の日々 わたしは東京市豊島区雑司ヶ谷で生まれた。 多分父の勤め先、当時の本郷区駒込にあった理化学研究所に近いので雑司ヶ谷に居をかまえたのだろう。 1937年4月、中国東北部の長春、当時の満州新京駅に降り立った時わたしは二歳足らずだった。盧溝橋事変が起きる三か月前のことである。 家族を連れて汽船で大連に向かい、大連から特急あじあ号に乗って新京に向...
【第1回】「ライラックの花香るころ―中国語を生涯の友として」 まえがき ライラックは、中国語では“丁(ディン)香(シャン)花(ホア)”、あるいは“紫丁(ズーディン)香(シャン)”という。 わたしが中国語に初めて本格的に触れたのは、七十年ほど前のことだった。 それは1950年に創立された長春(中国吉林省)の東北師範大学付属中学の誕生とほぼ重なる。わたしがその三年八組に編入学したのが1951年。 母校は、いわばわたしが中国語を身に...
【第3回】ロンドン・メトロポリタン大学会議通訳修士コース編「ロンドンでの生活と学習環境について」 こんにちは!ロンドン・メトロポリタン大学会議通訳修士コース在学中の渡辺有紀です。 イギリスでは6月初旬にエリザベス女王の即位70周年記念のお祝いがあり、大変な盛り上がりでした。ちなみにエリザベス女王は1926年生まれ。4月に96歳を迎えています。96歳でありながら凛として公務をこなしている女王の姿にいつも心を打たれます。 さて今回は、ロンドン・メトロポリタン大学(以下ロンドンメット)...
【第2回】手話通訳士への道「偏見と差別意識満載の私ー私の育ち その1」 100坪の土地に多数派のろう者、少数派のきこえる者の環境で育ち、私の家が千葉県、千葉市のろう者の団体の事務所だったので毎日毎日たくさんのろう者が我が家に来ていたことを前回紹介しました。 毎晩のようにたくさんのろう者が、我が家の2間しかない(一部屋は父母の仕事部屋)我が家の6畳間を占拠していたのです。私の家での多数派は、半端ない多数派だったのです。にもかかわらず「手話もろう者も嫌い」な私...
【第2回】探査工学から見た地球と宇宙「カーボンニュートラルについて(1) 」 人間活動による二酸化炭素(CO2)の排出増加によって、気候変動が引き起こされていることは間違いないとされています。大気中のCO2濃度は、産業革命前に比べて約1.5倍にまで増えています。この急激なCO2の増加は、気温の上昇だけではなく、海水温の上昇など全地球システムに影響を与えています。地球システムは複雑で微妙なバランスの上で釣り合っていますが、近年の急激なCO2の増加はこの地球上のバランスを速い...
保護中: 【第15回】翻訳家ありのまま「会議通訳として駆り出された」 すでに何人ものトラブルをつらつらと書き綴ってきた私ではあるが、「そういうあなたはそんなに優秀だったのか、何一つ汚点はなかったのか」と訝しがる人もあろう。 じつは私にもあまりに恥ずかしくて一生だれにも言いたくなかったビジネス上の汚点がある。他人のトラブルばかり書いて自分の汚点を書かないのは不公平ではないかという思いがよぎったため、ここで私の汚点を赤裸々に語ろうと思う。というのも翻訳家の方々に...
保護中: 【第14回】翻訳家ありのまま「身の毛がよだつ大事件勃発」 大事件というのは突然勃発することは希で、たいていの場合、いくつもの原因が重なり合って勃発に至るものである。 例えば、ピッチャーがどんな球を投げたとしても、満塁になっていなければ満塁ホームランを打たれることはない。逆にいえば、ランナーが一人も出ていなければ、最悪でもソロホームランで済むのである。あるいは、高価な物品がたくさんある家に空き巣が入れば被害も甚大だが、盗むものが何もない家なら空き巣...
保護中: 【第10回】あの通訳研究って、実際どうなの?「EVS (Ear-Voice-Span)についての一考察」 【会員限定コンテンツ】 5月から既に全国で夏日、真夏日を記録しています。今年の夏も暑いという予報だそうですが、こんなに早くから暑さが訪れるとは想定外でした。マスクをいつどのように外してもいいのかが議論になっていますが、暑さが厳しくなってくるにつれ、マスクが苦しくなってきます。安心してマスク無しの生活が送れるようになるのは、いったいいつのことになるのでしょうか。 そのコロナ禍が世界中を...
保護中: 【第37回】放送通訳の世界「困った!でも止まれない」 【会員限定コンテンツ】 国際会議の同時通訳の場合、たいていは事前に資料を頂けます。資料とはすなわち当日のスケジュール、話者のプロフィール、原稿やスライド資料などです。通訳者としては、ありとあらゆる情報が助けになります。よって資料が事前にあるか否かで当日に大きな差が出てくるのですね。 一方、放送通訳の場合、当日になるまで何が出るかは不明。あらかじめネットや新聞でチェックしてヤマ...
【第1回】手話通訳士への道「先ずは私のこととこれから」 ●はじめに 今日から連載のスタートです。 私は52年前(1970年度)、千葉県で開催された全20時間の第1回手話奉仕員養成講座を卒業し、手話言語通訳の道を歩み始めました。 私の両親はろう者(大雑把な整理ですがろう者集団に所属し、手話言語の話者とします。)だったので、手話言語が飛び交う環境で育ちましたが、差別意識満載の私は、手話言語を否定し、「ろう」を受け入れられず、避けて育...
【第9回】通訳・翻訳学習記-ミドルベリー国際大学院「期末最終試験について」 卒業を決める最終試験 皆さん、こんにちは。ニック・コンチーです。私からの記事は今回で最後となりますが、今までの連載シリーズをお読みいただきまして誠にありがとうございます。ミドルベリー国際大学院(MIIS)で学ぶ内容・通訳方法などを皆さんにご紹介することができ、嬉しく思います。今回はMIISのファイナル試験と任意の修士論文について書いていきたいと思います。 無事に卒業できました!白い「...
【第10回】通訳・翻訳学習記 東京外国語大学編「卒業式と今後の進路について」 皆さん、こんにちは。日本会議通訳者協会理事の佐々木です。 桜が満開になったかと思えば、急に寒い日が戻ってくるという寒暖差が大きい日々が続いてますね。体調いかがお過ごしでしょうか。 ついに、本連載も最終回となりました。今回は卒業式の様子と今後のキャリアについてお話したいと思います。 卒業式 3月の下旬に東京外国語大学の卒業式がありました。コロナ禍が続くなか、今回の卒...
保護中: 【第13回】翻訳家ありのまま「京大卒社長VS東北大卒副社長」 翻訳部の人員体制は創設2年目に入ってからガラリと変わった。東大大学院出身の女性スタッフの勤務形態が「月曜だけ週1出勤、週4回自宅勤務」から「月曜と木曜の週2出勤、週3回自宅勤務」に変更になった以外にも、東外大卒の女性の後釜としてフェリス女学院大卒の女性が採用されたし、国際部から東北大卒の男性が異動してきた。 東北大卒の男性は55歳。社長より若干年少だ。大柄の社長とは対照的に小柄ではあったが...
【第1回】探査工学から見た地球と宇宙「地震について」 今日は、最近、頻発している地震について書かせていただきます。あまりニュースや教科書に載っていないことを、できるだけ分かりやすく書かせていただきたいと思います。 2011年東北地方太平洋沖地震の前は、地震学者は、地震の予知に向けて研究を行い、それなりに自信を持っている研究者も多かったと思います。特に東北沖の日本海溝では周期的に地震が起こってきました。そのため、どの場所で、どれくらいの規模の地...
保護中: 【第12回】翻訳家ありのまま「東大大学院出身の女性を寵愛する京大卒社長」 京大卒社長の目からすれば、京大こそが日本一の大学であり、東大は「同率1位で日本一の大学」であった。そんな社長がこよなく愛したのは、東大大学院出身の女性との「京大VS東大トーク」であった。 飲み会の席になると、必ず自分の横に東大大学院出身の女性を座らせ、「京大はこうだったが、東大はどうだったの?」という「京大VS東大トーク」を繰り広げるのだった。社長にしては、それがもっともしたかったトークテ...
保護中: 【第36回】放送通訳の世界「共感疲労」 【会員限定コンテンツ】 短期間で終結すると思われたウクライナ情勢。当初は「ロシアによるウクライナ侵攻」ということばが使われていましたが、最近は「戦争」という語も見られるようになりました。「戦争」は「宣言」をすることで本格化します。侵攻が始まったのは冬の終わり。そして今、私たちは夏を目前に控えているのです。 CNNでも特別体制がとられ、通常の番組が速報に切り替わりました。24時...
【第2回】ロンドン・メトロポリタン大学会議通訳修士コース編「全面オンライン授業からハイブリッド形式へ」 こんにちは!ロンドン・メトロポリタン大学会議通訳修士コース在学中の渡辺有紀です。イギリスではイースター休暇が終わり、夏に向けて爽やかな季節となっています。私の学生生活も2年目後半となり、5月中旬の通訳実技試験、そして修士論文の執筆に向けて、総仕上げの時期に入っています。 前回に引き続き、ロンドン・メトロポリタン大学(以下ロンドンメット)での会議通訳修士コースについて、私の体験を寄稿させてい...
保護中: 【第31回】製薬業界の通訳「おススメ製薬通訳教材⑥」 【会員限定コンテンツ】 第26回から、第25回までに取り組んできた各トピックをさらに学習する際のおススメ教材を紹介しています。第6弾の今回は、第21回~第24回が対象です。 第21回は「患者情報保護の通訳」(https://www.japan-interpreters.org/news/keitaro-morita-pharma21/)に取り組みました。 記事の冒頭で大きく...
【第9回】通訳・翻訳学習記 東京外国語大学編「二年次秋学期期末試験、いよいよ卒業目前!」 皆さん、こんにちは。日本会議通訳者協会理事の佐々木です。 少しずつ暖かくなり、梅や桜がちらほら咲き始めましたね。春はもうすぐそこですね。 今回は、二年次秋学期期末試験、オンライン形式の同時通訳実習、そして修士論文・修士研究発表会についてお話します。 二年次秋学期期末試験 秋学期期末試験は「同時通訳ワークショップ(日本語→英語)」と「英語同時通訳演習(英日)」で実施...
保護中: 【第11回】翻訳家ありのまま「想像を絶する残業地獄」 翻訳部創設1年目が終わろうとするころ、翻訳部に大型の和英翻訳の仕事が入ってきた。 社長は大喜びだったが、超特急で仕上げてほしいという依頼だったから私にかかる負担は甚大だった。というのも東外大卒の女性は1年で辞めさせられることが決まっていたし、「週1回出勤、週4回自宅勤務」の東大大学院出身の女性に和英翻訳を依頼するのは効率が悪かったため(というのもネイティブチェックを受ける場合、出社していた...
【第8回】通訳・翻訳学習記-ミドルベリー国際大学院「現場での力が試される、MIISの2学年目」 皆さん、こんにちは!丹羽つくもです。昨年から数回にかけて、母校ミドルベリー国際大学院(MIIS)についての連載をニック・コンチーさんと執筆しています。前回はついに2年生となった私たちの1学期目の様子を、ニックさんがまとめてくださいました。今回は、その続きということで、日英・英日の通訳・翻訳クラスだけではなく、他にもどんなキャンパスライフを送っているのかについてお話させていただきます! プラ...
保護中: 【第10回】翻訳家ありのまま「翻訳部創設1年で8人中4人がいなくなった」 個人的な恨みはまったくないので、悪くは言いたくはないのだが、中央大出身の営業担当の男性はつねにきな臭い噂が流れていた。男が身を持ち崩す3悪は酒とギャンブルと女だと言われるが、それを地でいくタイプかと思わせる噂だった。 翻訳部が創設されて半年過ぎた頃、突然、彼が出社しなくなった。彼の仕事は翻訳の仕事を取ってくるのがメインのはずだが、日々どのような仕事をしていたかは不明だった。というのも社長が...
【第18回】柴原早苗の通訳ライフハックス!「ホテル活用術」 この2年間、会議通訳もセミナーも授業もオンラインが主流となり、「交通機関を使って移動をして、現地に宿泊する」という機会がめっきり減りました。確かに、「自宅にいながらにして通訳や指導をできる」のは便利です。合間に家事をしたり宅配便を受け取ったりできますし、ラッシュの電車にもまれることもありません。でも、出張や旅というのは、現実から離れることができます。普段見慣れない光景を目にするだけでも新鮮な気持...
最終回【第10回】通訳案内士のお仕事~北の大地から「北海道のおすすめスポット」 皆様、こんにちは。北海道の通訳案内士・通訳者、飛ヶ谷園子です。この連載では通訳案内士の仕事について、主に北海道での実情を中心に様々な角度からお伝えしてきました。最終回となる10回目の今回は仕事の話を離れ、北海道の通訳案内士おすすめの「北海道の自然を楽しめるスポット」を季節ごとにご紹介します。 梅と桜の春 4月に入って新年度が始まり、満開の桜の映像や写真がテレビやインターネットにあふれ...
【第1回】ロンドン・メトロポリタン大学会議通訳修士コース編「コロナ禍に入学!」 「今、世界で起きていること、通訳者の役割をしっかり見ておくように。世界中の人達への情報の架け橋となること、それが私たち通訳者の使命です。」 2022年2月末、ロシアのウクライナ侵攻が開始された直後の授業で、最初に言われた言葉です。第二次世界大戦を前後して、国連やNATO、後のEUとなる国際機関が次々と設立されました。その大きな目的の一つが、国際平和です。同時通訳が世界で初めて公式に使用され...
保護中: 【第9回】翻訳家ありのまま「社長の大言壮語を封印してやった 」 ミシガン大学大学院出身の男性が「自宅待機」になり出社しなくなってからというもの、社長はことあるごとに彼を引き合いに出しては我々を鼓舞するようになった。 「あんな人なんか居なくなって十分やっていけるってとこ見せつけてやろうじゃないか。なあ、君たち、頑張れよ!」 英日翻訳のチェックは京大卒社長が行なっていたのだが、その頃からその厳しさが増した。誤訳が見つかろうものならこっぴどく叱られるよ...
【第7回】通訳・翻訳学習記-ミドルベリー国際大学院「MIISの2学年目:授業内容と環境が変わっていく!」 皆さん、こんにちは!ニック・コンチーです。今年の2月にJACI主催のパネルディスカッションに参加させていただきました。様々な大学院の通訳プログラムについて興味深いお話ができてとても楽しい時間を過ごすことができました。JACIの関根様にお声がけいただきましたこと、そしてご覧いただいた皆様に大変感謝しております。 早速ですが、今回はMIISの2学年目の授業内容について書いていきたいと思います。...
【第9回】通訳案内士のお仕事~北の大地から「通訳者と通訳案内士」 皆様、こんにちは。北海道の通訳案内士・通訳者、飛ヶ谷園子です。前回までは通訳案内士の仕事について、北海道での現状を交えながらお伝えしてきました。今回は通訳者と通訳案内士の仕事の違いについてお話しします。 通訳者の仕事、通訳案内士の仕事 通訳者と通訳案内士、どちらも高い語学力と幅広い一般常識、さらに特定の分野の専門知識が必要とされる職業です。ですが、その仕事内容や違いについては世間では...
【第2回】社内通訳者のお仕事「メキシコ野良通訳あれこれ」 なぜ社内通訳になったのか?理由は簡単。そうでないと通訳の仕事がなかったから! 私は大学で通訳の勉強をした訳でも、文系の学部だった訳でもありません。現在は日西・西日社内通訳としてメキシコで暮らしていますが、そもそもスペイン語を学ぶきっかけは、36歳の時離婚し、家事の分浮いた時間に何かやろうと思ったこと。東京でコンピュータプログラミングの個人事業の傍ら、ほぼ趣味で語学学校に通っていたのでした。...