保護中: 【第20回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「やっぱり意訳」 【会員限定コンテンツ】 私が通訳養成所に通っていた頃、先生方が呪文のように述べておられたのが、 「通訳という行為は、何も足さず、何も引かず」 でした。つまり、話者の意図を尊重するのが第一であり、通訳者が付け足したり差し引いたりしてはいけない、ということなのですね。これはとても大事なことであると私自身、感じています。 しかし、長年この仕事を続けるにつけ、この考えもTPOによ...
保護中: 【第19回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「最上級、どうする?」 【会員限定コンテンツ】 英文法の学習で必ず出てくる「比較級」と「最上級」。中学校で習いますよね。”-er” や”-est” など、英語の形容詞にたった2~3文字を加えるだけで規模の大きさが意味として変わってくるのです。コンパクトながらスゴイと思いませんか?日本語の場合、形容詞の形そのものは変わらず、「より大きい」「最も大きい」という形になります。言語の違いは実に楽しいですよね。 さて...
鶴田知佳子と考える「通訳をするということ」 この秋から、日本を代表する通訳者であり、研究者としても長きにわたり最前線を走り続けてきた鶴田知佳子さんを迎えて、「通訳をするということ」について様々なゲストと語り合うイベントが始まります。若手からベテランまで、通訳のリアルに関心がある方はぜひご参加ください。 第1回「スポーツ通訳」 9月29日(日)14:00-15:30ゲスト:平井美樹 第2回「放送通訳」 11月2日(土)1...
保護中: 【第18回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「そしてまたもや直訳意訳問題」 【会員限定コンテンツ】 今年の猛暑は異常でしたね。日本だけでなく、全世界的に前例のないお天気になっています。オーストラリアに住む私の友人も、「8月は例年にない寒さだった」と述べていました。 近年のこうした天候も考慮しているのでしょう。かつて日本の運動会・体育祭は秋の風物詩でしたが、昨今では春におこなうケースも増えています。そう考えると、夏季五輪もこれからは南半球で実施する方が合理...
保護中: 【第17回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「どの動物?」 【会員限定コンテンツ】 このコラムを書いているのは7月中旬。その数日前にトランプ氏が狙撃されるという衝撃的なニュースが発生しました。ケネディ氏やレーガン氏が狙われたときの映像は、「歴史的資料映像」として観たことはあります。しかし、私自身が生きる今、つまり、この2024年においてそのようなことがアメリカで生じたとはにわかに信じがたいことでもあったのです。 狙撃事件の当日、私は横須賀の千...
保護中: 【第16回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「直訳でしらけるぐらいなら」 【会員限定コンテンツ】 先日読んだ「生き方」関連の本に興味深いことが書かれていました。どのようにすれば、日々ストレスをためることなく幸せに暮らせるか、という内容です。著者いわく、 「できる限りテレビやネットのニュースを見ないことが大事」 とのこと。なぜならニュースというのは悲惨な出来事や、気分が滅入る内容が多いからです。一日の始まりに暗い話題に触れれば、爽快な朝の気分が台無しに...
保護中: 【第15回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「名詞化で短縮」 【会員限定コンテンツ】 放送通訳の最大の特徴。それは「何が出てくるか本番までわからないこと」に尽きます。会議通訳の場合、事前にテーマが告知され、業務日当日に向けて猛勉強できますよね。単語リストを作成し、登壇者のプロフィールをおさえ、動画サイトや著作などをチェックしておくなどなど。やることは山積みですが、この予習部分さえしっかりとおこなっておけば、当日はよほどの「脱線」が無い限り、対処でき...
保護中: 【第14回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「四字熟語は便利(ただし条件付き)」 【会員限定コンテンツ】 同時通訳をしていると、いかに「省エネで訳せるか?」が大事になってきます。何しろ和訳を考えているうちに、ヘッドホンから聞こえる英語はどんどん先を行っているのです。悩んでいる暇はありません。瞬時に考えてそれを口にする。その繰り返しにつきます。よって、回りくどい日本語や、口の動きが上下左右に激しくなるのも私にとっては避けたいところ。短い単語で内容をズバリ表現できる和訳が...
保護中: 【第13回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「日本の文化用語に訳しちゃった!!」 【会員限定コンテンツ】 同時通訳では一瞬の判断で訳語を選んでいきます。迷う時間はありません。それどころか、少しでも黙ってしまうとそのまま沈黙all the wayになりそうな恐怖にかられます。聞き手のお客様にしてみれば、それほどの空白時間ではないはず。でも同通まっただ中の通訳者のアタマの中はこんな感じ: 「わっ!訳語が出てこない。どーしよー?関連用語でも何でも良いから、早よ、出てこ...
保護中: 【第12回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「turning of the season」 【会員限定コンテンツ】 「〇月△日 放送通訳」「*月#日 会議通訳」という具合に、私の手帳にはスケジュールが書かれています。長年愛用しているのは見開きのカレンダータイプ手帳。一カ月を丸ごと見渡せるため、その月の予定が一目瞭然です。これを見ながら、いつ、どの業務の準備をするか考え、日々のスケジュールに落とし込んでいます。 今でこそ「締め切りからさかのぼって勉強計画を立てる」を意識でき...
保護中: 【第11回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「基本動詞の難しさ~keepを例として~」 【会員限定コンテンツ】 私と通訳の出会いは今からさかのぼる事はるか前。大学時代に「少し上級レベルの英語授業を」と履修したのが通訳講座でした。他学部でしたが当時社会学科に在籍していた私も履修単位として認められたのですね。当時はfree conversationを謳う英会話スクールが華やかなりし時代。でもそれでは物足りないため受講をしたところ、一気に魅了されました。とは言え、レベルがあまりに...
保護中: 【第10回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「~ 体のパーツは使える!~」 【会員限定コンテンツ】 2023年もあっという間に終わりましたね。これまで拙文「柴原早苗の通訳ライフハックス!」と「放送通訳の世界」をお読みくださったみなさま、前者は24回、後者は49回続けさせていただくことができました。これもひとえにアクセスしてくださったみなさまのお陰です。この場を借りて御礼申し上げます。本コラム「今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから」でも放送通訳現場で体験したことや...
【2/23】「スポーツ現場での通訳を語ろう」【遠隔】 スポーツビジネスの世界は造語、業界用語、 専門用語が入り乱れていますが、 その言葉だけを知っていても仕事にならない業界です。スポーツビジネスは言語力にプラス、 マネジメント力がなければなりません。マネジメント力がない通訳では最終的に選手が混乱を起こしてしま います。 また、何よりもアスリートに寄り添う気持ちが大切です。「アスリートのベストフレンド」 でもあるべき姿勢が求めら...
保護中: 【最終回】放送通訳の世界「自己反省もセットで」 【会員限定コンテンツ】 本業の放送通訳・会議通訳の他に私は「指導」にも携わっています。通訳養成所と大学です。通訳者デビューを目指す人や語学力を高めたいという思いを抱く受講生の方々がいます。 指導というのは事前の準備がカギを握ります。これは通訳の仕事同様でしょう。授業の場合は教材がありますが、内容をしっかりと読みこなすのはもちろんのこと、文法や単語について解説できるようにせねばなりませ...
保護中: 【第9回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「~ 人称!人称!人称!~」 【会員限定コンテンツ】 10月下旬のこと。岸田総理が国会で所信表明演説を行いました。そこで述べたのが「経済!経済!経済!」です。私はこの3単語を聞いて真っ先に思い出したことがあります。時代をさかのぼることおよそ30年。イギリスのブレア首相が、”Education! Education! Education!” と連呼していたのです。大事なことを3つ並べて強調する。これぞ演説の要なのでしょう...
保護中: 【第48回】放送通訳の世界「涙の正体」 【会員限定コンテンツ】 10月半ば、体調に異変を感じました。疲労感以上に困ったのがのどの痛み。通訳者であり教員でもある私にとって、のどは最大の仕事道具です。これが不調ともなれば、仕事はできません。フリーランスで働いているため、休むことになれば経済的打撃です。 思い当たる理由はありました。 それは、10月7日に発生した武装勢力ハマスによるイスラエル攻撃です。日本に一報が入ってきた...
保護中: 【第8回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「~That comes with being a member of the United States Congress ~」 【会員限定コンテンツ】 放送通訳者にとっての必須トピックは色々あります。オリンピックは4年に一回、サッカーワールドカップもMUSTですし、災害・戦争関連の用語も押さえておくべき。中国の全人代も定期的に話題になりますし、いまだ休戦状態の朝鮮半島事情なども歴史的背景を知っておかねばなりません。 とりわけCNNで大きく取り上げられるのは何といっても米国大統領選挙。4年に一回なのですが、ここ...
【第24回】柴原早苗の通訳ライフハックス!「ホントにマルチタスクで良いの?」 通訳の業務を依頼されると、私の頭の中ではボクシングのゴングが鳴り響きます。「さあ、準備開始!」となるわけです。準備項目だけでも実に沢山。単語リストの作成、登壇者のプロフィール下調べ、登壇者の著作や学術誌の記事探し、登壇者の講演が動画サイトにあればそちらのチェックなどなど。もちろん、当日の発表原稿やスライドがあればそれらもくまなく読み込みます。当該の仕事「だけ」に集中できれば良いのですが、大抵の通...
保護中: 【第7回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「~a yearbook photo~」 【会員限定コンテンツ】 幼少期に私はオランダとイギリスに暮らしていました。アムステルダムで通っていたのはアメリカン・スクール。よってカリキュラムは米国準拠のものでした。当時はアメリカ人の師弟に次いで日本人の生徒数が多かったですね。日本の高度経済成長期で、海外駐在員が増えていた時期でした。 その後、転入したロンドン郊外の私立女子校は英国国教会を母体にした幼稚園から高校までの一貫校。アム...
保護中: 【第47回】放送通訳の世界「遅まきながらの自動翻訳」 【会員限定コンテンツ】 放送通訳業がメインの私ですが、スケジュールの調整がつけば会議通訳業務もお受けしています。ただ、私にとっての問題点は「日英通訳への苦手意識」。いかんせん、日ごろ「英日」のニュース同時通訳が主流であるため、なかなか日本語から英語への変換活動をする機会がないのですね。 でも「通訳者」の看板を掲げている以上、「日英はデキマセン」と言うのはご法度。となると、自分で日ごろ...
保護中: 【第6回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「~the last person to…~」 【会員限定コンテンツ】 CNNの同通スタジオには広めのデスクとオフィスチェア、そして目の前には現地から放映されるテレビ画面があり、私たちはマイク付きヘッドホンを着用し、自分でスイッチをオン・オフします。また、調べ物用のパソコンもあります。2名で30分ずつ交代をしながら同時通訳をするのですね。 30分の間には2~3回のCMが入ります。CM時間はおよそ数分。お知らせの前にプレゼンターが”...
保護中: 【第46回】放送通訳の世界「自分のチカラでケアしたい」 【会員限定コンテンツ】 どのような仕事であれ、その業務特有の「副作用」があります。たとえばスポーツ選手であればケガは付き物ですし、ピアニストは腱鞘炎に見舞われたりします。カウンセラーの場合、クライアントの話に共感して疲労することもあると聞きます。 では放送通訳者はどうでしょうか?私は20年以上、この仕事を続けており、いつもやりがいと使命感を抱いて臨むようにしてきました。また、ニュース...
保護中: 【第5回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「~debunk~」 【会員限定コンテンツ】 「通訳の仕事をしていて、『業界あるある』ってありますか?」 先日、学生から出た質問です。うーん、色々思いつきますよねえ。たとえば、 「つい何でも調べたくなってしまう。気になるとすぐ検索」 「不明単語が出ると宝物を掘り当てた気分になり、意味調べに勤しむ」 「日ごろ『他者』のことばを通訳しているので、プライベートになると『自分語り』で饒舌にな...
【第23回】柴原早苗の通訳ライフハックス!「自分の思いを育む~書くことを通じて~」 通訳の仕事をしていると、さまざまなトピックに触れられますよね。私自身、この業務がなければおそらく出会わなかったであろう分野がたくさんあります。医学、最先端技術、国際政治、ノーベル賞、大統領選挙などなど数知れず。仕事のたびに猛予習をして臨む、そしてその世界の著名な方々のお話を訳させていただく。本当にありがたい職業だと思っています。 こうして多様な考えや価値観に触れられるのは恩恵です。でも、私...
保護中: 【第4回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「~balance the budget~」 【会員限定コンテンツ】 放送通訳の仕事を始めてから一番気にかけているのは、「必要以上の無音状態を作らないこと=放送事故」です。放送事故は放送局によって定義が異なるようですが、ラジオの場合、無音状態が「5秒、13秒、20秒」続くと放送事故だそうで、総務省に報告の義務があるのだとか。大ごとになりますので、テレビの同時通訳もやはり気を付けなければいけません。 となると、いかに無音状態を回避...
保護中: 【第45回】放送通訳の世界「悩ませ単語」 【会員限定コンテンツ】 ロンドンのBBCで放送通訳デビューをしたのが1998年。計算するとかれこれ25年間、この仕事に携わっていることになります。その間、様々な出来事が世界を駆け巡りました。順不同ですが思い出すニュースと言えば、エリザベス皇太后葬儀、クリントン元大統領とモニカ・ルインスキーさん事件、9・11事件、イラク戦争、東ティモール独立、トランプ政権誕生などなど。本当に多くの出来事があ...
【第3回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「”State’s largest employer”」 アメリカ大統領選挙は4年に一回おこなわれます。実施年はオリンピックと同じ。放送通訳者にとって、その年の夏は五輪関連のニュースが増え、秋になると大統領選たけなわということになります。 しかし、大統領選挙は投票日のある11月「だけ」ではありません。実はその数年前から戦いは始まっているのです。2020年の「トランプ対バイデン」の時も、ずいぶん前から「指名候補、予備選挙、選挙人団、党員集会」といっ...
保護中: 【第44回】放送通訳の世界「くだけたフレーズ、どこまで?」 【会員限定コンテンツ】 「ロンドンで働きたい!」 そう思ったのは、イギリスの大学院生活を終えて帰国してしばらく経った頃。1年間の修士課程はハードでしたが、ロンドンの空気が自分に合っていたのでしょうね。戻ってくるや「次はどのようにしたら英国暮らしができるだろう?」と考えたものでした。愛読していた井形慶子さんの本を読んではあれこれ作戦を練るも、そう簡単にはいきそうにありません。選択肢...
【第2回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「”So steeped in history.”」 訳語についてあれこれ考えるという行為。これは何も通訳ブースの中だけとは限りません。私の場合、日常生活で見聞きする英語すべてが「通訳対象」となっています。あれこれ訳語を即座に考えること。そうした瞬発力を自分に課すのはスリリングでもあるのです。 ただ、放送通訳の場合、対象はニュースです。よって、いつもそうした「ゲーム感覚」で対処できるわけでもありません。ニュースの大半は事故や事件、人々の苦しみ...
【第1回】今日も苦し紛れ!放送通訳のブースから「”There’s always a little bit of a sour note in every chord.”」 今から遥か昔、学生時代の私はジャーナリストの千葉敦子さんの本を読んで大いに感化され、「報道の仕事をしたい!」と思っていました。ただ、人生、そう計画通りには進まないもの。私自身、紆余曲折を経て放送通訳の世界に入ったのでした。 で、この放送通訳、私にとっては実にエキサイティング。何しろ最大の予習法は「新聞・ニュースをチェックすること」のみ。会議通訳であれば事前に資料を頂き、単語リストを作って臨...