保護中: 【第32回】翻訳家ありのまま「翻訳書が出したいんじゃなかったんかい」
30代の頃の私は次々と著訳書を出しており、執筆と翻訳で多忙を極めていたが、そんな中でもあちこちの出版社に売り込みをかけていた。
血気盛んだった私はアポイントも取らずに、自分の著訳書を持参して出版社に突撃することもあったのだが、そのうちの一つがH出版であり、たまたまそのとき受付に現れたのがT氏だった。
見たところ40代のT氏は嫌そうな顔をしながらこう言った。
「すみません、今ちょ...