翻訳家ありのまま

保護中: 【第40回(最終回)】翻訳家ありのまま「テレビ出演で知った“どす黒い闇”」

2022年2月某日、某テレビ局からテレビ出演の依頼が来た。40分番組のメインゲストで出てくれないかという。ウッソー、私がテレビに? でも本当だった。じつは正月明けあたりから、なぜだか知らないが自分がテレビに出る予感がしていたのだが、それがまさか現実のものになるとは。これぞクオンタムリープだ! わっはっはっはっ、これでいいのだ。 まあテレビといっても地上波ではなくネットテレビではある。でもい...

保護中: 【第39回】翻訳家ありのまま「すぐにできるはずの打ち合わせを何ヶ月延期するんだよ!」

出版業界はスケジュール変更などザラにあるが、打ち合わせ日程をずるずると延期されるとどんなにやる気が喪失するか、その実例をお話ししたい(これは前回の続きである)。 「出版できるか否か検討するからA氏の本を貸してほしい」と頼まれたのでA氏の本を6冊ほどH社に送ったところ、翌日編集者からメールが来た。「社長が面白そうねと言っていました」とは書かれてあったが、まだ出版決定というわけではない。翻訳は...

保護中: 【第38回】翻訳家ありのまま「そんなに売れている本の真似がしたいわけ?」

打ち合わせするはずだった予定がずるずると延ばされると、(本当にこの編集者、この本出したがっているの? 本当は出すのを止めたいんじゃないの?)とだんだんやる気が失せてくる。今回は、打ち合わせを延期されるたびにやる気がどんどん失せていき、やっとのことで行なった打ち合わせの席で私が失言を吐いてしまった結果、出版自体がパーになってしまった失敗談をお話ししよう。同じような扱いを受けている著訳者も多いと思う...

保護中: 【第37回】翻訳家ありのまま「30分以内に弁護士をぎゃふんと言わせてやった」

G出版からの依頼で翻訳を仕上げたのに勝手に出版を中止にされ、調停も不調にされたので訴状を出したわけだが、驚くことに「出版契約は成立していなかった」という答弁書が返ってきた。え、初版印税も払っているのに「出版契約は成立していなかった」って、そんな主張が通るとでも思っているの? 契約は諾成契約と要物契約に分けられる。口約束だけで成立するものを諾成契約といい、物の引き渡しが必要なのが要物契約だ。...

保護中: 【第36回】翻訳家ありのまま「これが有名カリスマ社長の本性か」

表紙から自分の名前を外されて出された場合、その慰謝料はいくらが妥当なのか。あなただったら慰謝料をいくらもらったら許せるだろうか。20万? 50万? 100万? それともお金をもらっただけでは許せないだろうか。 F舎側と私の間で慰謝料(F舎側は“解決金”という言葉を使っていたが)の額を詰めている最中だというのに、弁護士はF舎に「表紙を直したものだけを外部に出す」と約束させた成功報酬として10...

保護中: 【第35回】翻訳家ありのまま「裁判所で決めた和解条項まで破るのかよ!」

自分の訳者名を表紙から外されて出された怒りは忘れ去ろうとしても忘れられるものではない。なにせこれは立派な犯罪なのだ。泣き寝入りしていていいという類いのものではないのだ。しかも話し合いがこじれにこじれたため、わざわざ裁判まで起こしたのだから、ちゃんと表紙を直してくれたか確認させてもらうぞ! (よし、秘書代行サービスに頼んでF舎のホームページから本を一冊注文してもらおう。そうすれば表紙を直した...

保護中: 【第34回】翻訳家ありのまま「表紙、本当に直してくれたんかい」

悪夢を見た。思いっきり腹が立つ悪夢で、あまりにも腹が立ったため、その怒りでハッと目が覚めた。恐怖で目が覚めたことは過去に何回が経験あったが、怒りで目が覚めたのは人生初だ。 いったいどんな悪夢なのかといえば、私の著書として出るはずだった本が、出版当日に私の名前が表紙に載っていないことが判明するという悪夢である。表紙には誰の名前も載っていない。えっ、これって何なの? と思いながら裏表紙を開くと...

保護中: 【第33回】翻訳家ありのまま「訳書のタイトル、誰が決めると思いますか」

訳書のタイトルって、いったい誰が決めると思いますか。訳者? それとも出版社? それとも訳者と出版社が相談し合った上で? で、最終決定権はどちらにあると思いますか? この点に関して私は次のように解釈している(あくまで私の解釈である)。すなわち「最終決定権は出版社にあり、ゆえに通常は出版社が一方的に決めるが、出版前に訳者に伝えることは伝える」。 最終決定権が訳者ではなく出版社にあると私が...

保護中: 【第32回】翻訳家ありのまま「翻訳書が出したいんじゃなかったんかい」

30代の頃の私は次々と著訳書を出しており、執筆と翻訳で多忙を極めていたが、そんな中でもあちこちの出版社に売り込みをかけていた。 血気盛んだった私はアポイントも取らずに、自分の著訳書を持参して出版社に突撃することもあったのだが、そのうちの一つがH出版であり、たまたまそのとき受付に現れたのがT氏だった。 見たところ40代のT氏は嫌そうな顔をしながらこう言った。 「すみません、今ちょ...

保護中: 【第31回】翻訳家ありのまま「出版が遅らされ、支払いも遅らされ…」

すでに「未払い印税回収劇」を三度お話ししたわけだが、“出版された本”の印税は比較的回収しやすいのである。ところが、ずるずる出版を遅らされている場合は、出版されていないだけに回収が難しい。出版社側にしても“出版されてない本”は売り上げが上がってないわけだから印税を先払いするのは難しいだろう。だからずるずる出版が遅れることは出版社にとっても著訳者にとっても非常にまずいことなのだ。 その“ずるず...

保護中: 【第30回】翻訳家ありのまま「未払い印税回収劇③マル秘催促法」

私が作家・翻訳家デビューした1990年代半ばは出版業界が最も盛り上がっていた頃だったが、その後IT革命のあおりを受けて本が売れなくなり、出版業界は未曽有の大不況となった。出版業界の規模は年々縮小し、出版社の数も書店の数も激減した。 だが、その一番のしわ寄せが行ったのは作家・翻訳家ではないかと思えてならないのだ。実際、翻訳家へ支払われる訳者印税は8%が相場と言われていたが、7%になり6%にな...

保護中: 【第29回】翻訳家ありのまま「何冊リーディングをタダでやらせるつもりなんだよ!」

ある日、何の縁もなかったLパブリッシングのK氏から突然電話がかかってきた。K氏によれば、翻訳エージェントから紹介があったとのことで、私にリーディング(原書の概要作成)を求めてきた。 じつは翻訳エージェントからの紹介で連絡が入ったのはそのときが初めてだったが、仕事に結びつくかもしれないわけであるから、紹介されること自体はありがたいことではあった。ただ、K氏がまるで私がリーディングを引き受ける...

保護中: 【第28回】翻訳家ありのまま「リーディング料、出ないんじゃなかったの!?」

出版翻訳家が出版社からよく頼まれることの1つにリーディングがある。何をやるかといえば、原書にどんなことが書いてあるかがざっと分かるように日本語で概要を作成するのである(「概要」のことを「サマリー」といったり「シノプシス」といったりする出版社もある)。 編集者はその概要を企画会議にかけ、出版するか否かを話し合うというわけだ。私は数十人の編集者とお付き合いしてきたが、原書が読める人は皆無に等し...

保護中: 【第27回】翻訳家ありのまま「全部訳した後でそう言われても…」

Z社の編集長から出版の相談に来て欲しいといわれたので伺ってみると、編集長はその場で編集者K女史を紹介してくれ、今後は彼女と二人で進めてくれと言った。 K女史は「急がして悪いけど2ヶ月で仕上げてもらえる?」と依頼してきた。かなりの無茶ぶりだったが、死に物狂いで2ヶ月で仕上げて訳文をK女史に送った。 数日後K女史に呼び出されたので編集部まで行ってみると、彼女は開口一番こう宣った。 ...

保護中: 【第26回】翻訳家ありのまま「印税率を聞くのも一苦労」

前回、印税の支払時期について詳しく聞いていなかったために生じた一悶着をお話したわけだが、読者の中には「事前にきちんと聞いておかなかったあなただって悪いよ」と私を非難する人もおられると思う。たしかにそれも一理ある。だが、印税の支払いについて詳しく聞き出すことはけっこう大変なのである。今回はそれがうかがえる実例をお話ししようと思う。 ある日、G出版からメールで翻訳書出版の相談を持ちかけられたの...

保護中: 【第25回】翻訳家ありのまま「未払い印税回収劇②ちょっと可哀そうなことしちゃったかな」

Cセラーズで初めて訳書出版することが決まったとき、編集者から「印税6%」と聞いて仕事を始めたのだが、見本書籍ができた日に「重版印税の6%は約束するから、初版印税だけ4%に負けてほしい」と相談を持ちかけられ、うかつにも私はそれを了承してしまった。その際、「印税支払日は発売の2ヶ月後」と聞かされていたが、その後経理部から送られてきた明細を見てみるとビックリ。印税は発売後2か月後から月に1回、4回に分...

保護中: 【第24回】翻訳家ありのまま「未払い印税回収劇①私だって生活に困ってます」

留学から帰国して3年経っても生活は苦しいままだった。最大約50万円まで膨らんだ借金を英会話講師などをやりながら完済したばかりで、いつ借金生活に逆戻りするかというギリギリ状態が続いていた。 そんなある日、編集者が拙宅に打ち合わせに来たので、一番気になっていたことを訊いた。 「印税って、いつ支払われるのですか」  すると彼女、ばつが悪そうにこう応えた。 「えっ、言ってませんで...

保護中: 【第23回】翻訳家ありのまま「『売れてるのか?』って何度も同じこと訊かないでよ!」

前回、「誰でも本を出せる」という夢のある話をしたので、今回は本を出すことのネガティブな側面をお伝えしようと思う。ポジティブな側面とネガティブな側面の双方を勘案して、それでも本を出したいと思えるか冷静にご判断いただければと思う。 単行本の執筆や翻訳に夢があるのは否定しない。ただ、「ベストセラーになって印税ガバガバ」というのは、狙ってできるようなものではないし、そもそもそんなことを狙って書いた...

保護中: 【第22回】翻訳家ありのまま「売り込んで売り込んで売り込んで…」

読者の方の中には、「いつか私も本を出してみたい。訳書でも語学参考書でもエッセイでも私小説でもいい。とにかく自分の名前で本を出してみたい。だけど、それって生まれ持った特別な才能がある人しかできないことじゃないかな」と思い込んでいる方がおられるのではないかと思う。 しかし本を出すのに生まれ持った特別な才能など要らない。その実例が私だ(笑)。30歳まで「私の本を出してくれる出版社など絶対に見つか...

保護中: 【第21回】翻訳家ありのまま「『暇があったら翻訳お願いできませんか』って言われても…」

2年間の大学院生活を終えて帰国する際、私は“ちょっとした有名人”になった気分に浸っていた。今から思えば、まったくの錯覚なのだが、当時の私が錯覚するのも無理はなかった。というのもシェフィールド大学のエッセーコンテストに4期連続で入賞したり、在英邦人向けの日本語新聞2紙からコラム連載を依頼されたり、留学体験記を出版するとイギリスの新聞にバカでかい顔写真付きで紹介されたり、その流れでBBCラジオに出演...

保護中: 【第20回】翻訳家ありのまま「イギリスでのハチャメチャなバイト体験」

前回、留学中に「翻訳以外にも通訳、日本語教師、日本語のナレーター、在英邦人向け新聞のコラム連載の仕事が入ってきた」と書いたため、私が語学力抜群の優秀な人材だと勘違いしたかたもおられると思うので、タネ明かしをしておこうと思う。 私が次々と仕事にありつけたのは、それだけ私が優秀だったというよりも、シェフィールド在住の日本人の数が限られていたからである。つまり、当時のシェフィールドには「日本人だ...

保護中: 【第19回】翻訳家ありのまま「イギリスで翻訳の仕事にありつけたものの…」

“一流”と言われる企業を自ら希望退職し、社長がいう“無名の”大学院に留学するというのは、社長に言わせれば「意味がない」ことだし、同僚に言わせれば「もったいない」ことではあった。しかし30歳手前になっていた私にとって、その時期を逃せば一生後悔することになるという切迫感があった。出版翻訳家だけでなく同時通訳者にも憧れがあったので、1年でも早く留学してネイティブに近い発音を身に付けたかったからである。...

保護中: 【第18回】翻訳家ありのまま「私の退職後10ヶ月で翻訳部は消滅した」

振り返ってみれば、翻訳部は創設直後からずっとゴタゴタ続きだった。 しょっぱなから慶大卒スタッフが無断欠勤続きで解雇となったし、ミシガン大学大学院出身の男性も大型契約を潰す原因を作ったために「自宅待機」となり、中央大卒の営業部員は“人間としてやってはならない超ヤバいこと”をやったために即解雇となり、東外大卒スタッフも“ヤバいこと”をしたというきな臭い噂が社長の耳に入ったために1年で契約が打ち...

保護中: 【第17回】翻訳家ありのまま「東北大卒副社長の驚愕すべき一面」

東北大卒副社長が翻訳部に異動してきた当初、私はネイティブ並の英語を話す彼に憧憬の念を抱いていた。 ところが前回述べたとおり、彼は私に対して「(オーストラリア人を“除外”する内容の)あの求人広告はまずいよ~」と声を荒げたのである。求人広告の原稿は社長が書いたことは彼も知っていたし、彼自身、私が英訳した英文をチェックもしていたにも関わらず、である。私はそのとき思ったのだ。 (求人広告はも...

保護中: 【第16回】翻訳家ありのまま「オーストラリア人解雇事件」

翻訳部設立2年目が終了するとき、オーストラリア人校正者も契約が打ち切られることになった。 彼はもともとグループ企業内の英会話講師をしていたのだが、自ら校正の仕事がしたいと申し出て翻訳部の校正者になっていた。彼の仕事は英文をチェックすることだから、日本語ができなくてもできる。彼はそれをいいことに日本語を学ぼうとせず、漢字は勿論、ひらかな・カタカナですら読めないままだった。 社長はそんな...

保護中: 【第15回】翻訳家ありのまま「会議通訳として駆り出された」

すでに何人ものトラブルをつらつらと書き綴ってきた私ではあるが、「そういうあなたはそんなに優秀だったのか、何一つ汚点はなかったのか」と訝しがる人もあろう。 じつは私にもあまりに恥ずかしくて一生だれにも言いたくなかったビジネス上の汚点がある。他人のトラブルばかり書いて自分の汚点を書かないのは不公平ではないかという思いがよぎったため、ここで私の汚点を赤裸々に語ろうと思う。というのも翻訳家の方々に...

保護中: 【第14回】翻訳家ありのまま「身の毛がよだつ大事件勃発」

大事件というのは突然勃発することは希で、たいていの場合、いくつもの原因が重なり合って勃発に至るものである。 例えば、ピッチャーがどんな球を投げたとしても、満塁になっていなければ満塁ホームランを打たれることはない。逆にいえば、ランナーが一人も出ていなければ、最悪でもソロホームランで済むのである。あるいは、高価な物品がたくさんある家に空き巣が入れば被害も甚大だが、盗むものが何もない家なら空き巣...

保護中: 【第13回】翻訳家ありのまま「京大卒社長VS東北大卒副社長」

翻訳部の人員体制は創設2年目に入ってからガラリと変わった。東大大学院出身の女性スタッフの勤務形態が「月曜だけ週1出勤、週4回自宅勤務」から「月曜と木曜の週2出勤、週3回自宅勤務」に変更になった以外にも、東外大卒の女性の後釜としてフェリス女学院大卒の女性が採用されたし、国際部から東北大卒の男性が異動してきた。 東北大卒の男性は55歳。社長より若干年少だ。大柄の社長とは対照的に小柄ではあったが...

保護中: 【第12回】翻訳家ありのまま「東大大学院出身の女性を寵愛する京大卒社長」

京大卒社長の目からすれば、京大こそが日本一の大学であり、東大は「同率1位で日本一の大学」であった。そんな社長がこよなく愛したのは、東大大学院出身の女性との「京大VS東大トーク」であった。 飲み会の席になると、必ず自分の横に東大大学院出身の女性を座らせ、「京大はこうだったが、東大はどうだったの?」という「京大VS東大トーク」を繰り広げるのだった。社長にしては、それがもっともしたかったトークテ...

保護中: 【第11回】翻訳家ありのまま「想像を絶する残業地獄」

翻訳部創設1年目が終わろうとするころ、翻訳部に大型の和英翻訳の仕事が入ってきた。 社長は大喜びだったが、超特急で仕上げてほしいという依頼だったから私にかかる負担は甚大だった。というのも東外大卒の女性は1年で辞めさせられることが決まっていたし、「週1回出勤、週4回自宅勤務」の東大大学院出身の女性に和英翻訳を依頼するのは効率が悪かったため(というのもネイティブチェックを受ける場合、出社していた...