須納瀬淳

保護中: 【第9回】フランスとレイシズム「エコノミー・コロニアル:フランス海外県とその経済的支配」

【会員限定コンテンツ】  いくつもの植民地をかつて所有していたヨーロッパ諸国のなかでも、フランスが抜きん出て旧植民地に対して強力な支配を維持し続けている国であることは、よく知られている。なかでも中央アフリカから西アフリカにおいて流通している通貨Franc CFAは、フランスが各国に強制する経済的支配の道具としてしばしば批判の対象となってきた。通貨価値の安定性という建前のもとで現地の経済的発...

保護中: 【第8回】フランスとレイシズム「パリ・オリンピック、誰のため?」

【会員限定コンテンツ】  この夏のパリで、オリンピックとは何なのだろうかと改めて問わずにはいられない。そこには多くの要素が混在しているため、一言で形容することは難しい。ただ、それが単なるスポーツの祭典などではないということだけは確かだ。  この疑問を抱くのは初めてではなかった。2021年、遠くの地から東京オリンピック開催の報を知り、「やはりやってしまったか」と思いはしたが、そうはいっ...

保護中: 【第7回】フランスとレイシズム「暴動のニューカレドニア、その怒りの根源について」

【会員限定コンテンツ】  5月13日から仏領ニューカレドニアで、首府ヌメアを中心に起きた「暴動」の経緯については既に日本でも多く報道されているので、ここで繰り返す必要はないように思う。今回は、「暴徒」と化した独立派のカナック(ニューカレドニアに三千年前から住むとされる先住民)の人々の怒りを引き起こした問題の根源がどこにあるのかについて、少しだけ考察してみたい。結論から言えば、現在の危機の根...

保護中: 【第6回】フランスとレイシズム「パリ・オリンピック、アヤ・ナカムラ、そして不可視化される人々」

【会員限定コンテンツ】  二月末。今夏にパリ開催を予定されているオリンピック・パラリンピックの開会セレモニーで、大統領エマニュエル・マクロンが、ある有名歌手に開会セレモニーでの歌唱披露を要請した、との「エクスプレス」紙による報道が議論を巻き起こした。 その歌手とはアヤ・ナカムラで、30歳にも満たない若さながら、いまや世界中で最も聴かれているフランス語圏歌手と言われている。去年5月のパ...

保護中: 【第5回】フランスとレイシズム「ある悲惨な小説について」

【会員限定コンテンツ】   パリ五区に位置する観光名所の一つ、パンテオンは、フランスの歴史的偉人たちを祀る巨大な霊廟だ。この墓所に登録される人物の指名権は第五共和制発足以降、共和国大統領のみに与えられており、その人物が残した足跡を国家の歴史のうちに正式に刻むために現在もなお、新たな誰かがこの施設の中に加えられている。  それゆえにパンテオンとは非常に政治的な施設と言える。というのも、...

保護中: 【第4回】フランスとレイシズム「ある悲惨な小説について」

【会員限定コンテンツ】  2024年1月17日。フランス最高裁判所(破棄院)は、それが人種差別的な名誉毀損にあたるとして、ある小説に有罪判決を下した。その小説とは2020年夏、雑誌『ヴァルール・アクチュエルValeurs Actuelles』誌に偽名で掲載されたわずか七頁の作品で、『オボノ・アフリケーヌObono Africaine〔=アフリカ人女性・オボノ〕』と題されていた。タイトルが示...

【第3回】フランスとレイシズム「フランスとイスラエル–パレスチナ問題」

 みなさま、こんにちは。この連載はフランスにおけるレイシズムの問題を扱うものですが、今回は、事態の緊急性という事情もあり、現在起きているイスラエル–パレスチナ問題(あるいはパレスチナ人ジェノサイド)とフランスの状況についてコメントします。以下、本文です。 10月7日、パレスチナの武装組織ハマスによるイスラエルへの大規模攻撃に対して、イスラエルはガザ空爆という形で応じ、いまやこれは3...

【第2回】フランスとレイシズム「アバヤ・パニック」

みなさま、こんにちは。フランスにおけるレイシズム(人種差別)について論じる本連載。二回目となる今回は、去る9月にこの国メディアで大きな話題となった「アバヤ」(「アバーヤ」とも表記される)について。以下、本文です。  発端は、秋からの新学期が始まる直前、教育相ガブリエル・アタルが発表した政府方針だ。それによると、本年9月から全公立学校においてアバヤ(主にアラビア半島地域で女性...

【第1回】フランスとレイシズム「警察の暴力、継続する植民地主義」

みなさま、はじめまして、こんにちは。新しくはじまるこの連載は、フランスで起きているレイシズム(人種差別)の問題を扱うものです。とあるパリでの出会いをきっかけに、今回この連載を任せていただくこととなりました。 私はといえば、渡仏してはや10年、植民地主義と資本主義の暴力性について、細々と研究をしている者です。ここではさまざまな具体例の分析を通じて、大手メディアなどではあまり報じられることのな...